第26話 魔物図鑑と常識?

 

 ティナたちがルイを連れて行ってしまった。


 テトモコに詮索禁止、ついていくの禁止、影世界で見るの禁止と言われてしまった。

 なにもさせてくれないみたいだ。

 正直、テトモコシロそれにルイがいて、万が一が起きるとは思っていない。

 でも、ティナが自発的にルイと外に行くと言ったんだ。

 気になるだろ。

 詮索するななんて無理だよ。


 でも、テトモコにきつく言われたからな。

 あきらめるしかない。


 そういえば、俺が一人でいるのはいつぶりだろうか。

 もしかして、この世界で一人って初めてじゃないんだろうか。

 死の森ではいつも近くにテトモコがいた。

 ティナとシロに出会ってからは、そばを離れたのは、二回だけのはずだ。

 くそな冒険者二人組で検証をしたとき。

 決闘をしたとき。

 それぐらいな気がする。


 その時も、テトモコのどちらかが俺のそばにいた。

 

 二年ぶりぐらいに一人になってみるとあまり一人ですることってないな。

 この世界には、ネットやゲーム、スマホもない。

 部屋で一人。さぁーなにをしよう。


 魔法の練習はここではできないな。

 死の森では、テトモコとあーでもない、こーでもないと話ながら、魔法を研究していた。

 こめる魔力量を間違えて、大規模破壊をしてしまって、モコに怒られていたな。

 テトはすごーいと褒めてくれていたが、環境破壊はしないほうがいいんだよ。

 テトもマネして、大規模な水の槍を降らせて、モコに怒られていたっけか。懐かしいな。

 モコは火魔法を使えるが、死の森ではあまり魔法を発動させなかったな。

 最初の時から、モコは冷静でよく周りを見ていた。

 テトの面倒をみてくれるし、本当に良い子だ。

 

 思い出にふけるのもいいが、やっぱなんかしようか。

 

 ティナの買った魔物図鑑でも見よう。

 そう思い立ち、影収納から本を取り出す。


 魔物図鑑には結構多くの魔物が掲載されている。


「あの亀Aランクの魔物だったのか、それは固いわけだ」


 魔物はランク付けされ、討伐の難易度が示されている。

 ランクにはA~Eあるみたいだが、死の森でみられた魔物の多くはA,Bとされている。

 どの魔物情報にも、知能が高く、油断するなと書いてあるな。

 まあ、頭はいいけど、そこまで強くはないんだけどね。

 

「お、テトの種族か」

 

 アサシンタイガー。Sランク。

 体長 40センチ。 黒毛  水色の瞳

 主に影魔法と水魔法を使い、闇にまぎれ襲い掛かってくる。

 見かけたら敵対する前に、その場を離れることを推奨とする。

 見た目は黒猫のようであり、街中で見ても気づくことはないだろう。

 森や草原に黒猫がいたらそれをアサシンタイガーだと思え。

 

 見分けなんかつかないよな。

 ただの猫とほとんど変わりがない。

 それに、見て逃げるのは正解だと思う。

 

「なになに?一人の少女が飼っていた黒色の猫がアサシンタイガーであり、その魔物により国が滅びた?」


 本にはそのようなストーリーが載せられていた。

 いや、なにしたら、その猫に国が滅ぼされるんだよ。

 テトのことを考えると、まぁ、ありえなくもないのか。

 

 このスレイロンの街なら、一日とかからず、粉々にできるだろう。

 無数の水の槍が上空にあることを想像する。

 首謀者を見つけようとしても、影に入って移動すれば追跡は不可能。

 しかも広い街で猫一匹探すのは至難の業だろうな。

 

 次のページにはシャドーキングウルフと書かれている。


「モコか。こいつもやばいんだろうな」

 

 シャドーキングウルフ。Sランク。

 体長 2メートル 黒毛  赤色の瞳

 主に影魔法と火魔法を使い、闇に紛れ襲い掛かってくる。

 見かけたら敵対する前に、その場を離れることを推奨とする。

 巨体のわりにスピードが速く、逃げることは不可能。

 成体を見つけると子犬のシャドーキングウルフが近くにいることがある。

 

 ほぼテトと一緒か。

 子犬のシャドーキングウルフ……子供か大人か判断できないな

 モコは大きさ変えられるからね。番かもしれないし。本当に子供かもしれない。

 でもこんな内容じゃ、全然伝わらないだろうな。

 でストーリーは。


「討伐部隊が山の中を進んでいると、突然火があがり一瞬で一つの山が燃え、焦土とかした」


 うすっぺらいストーリーだな。

 山火事か。モコにとっては余裕だろうな。

 てか、これだけであれば人間にもできそうだが。

 一瞬で山が燃え、焦土とかす。

 表現の仕方が曖昧なので、燃え広がり時間をかけ、焦土になったのか。

 広範囲の火魔法が山全体に発動され、一瞬で焦土にしたのかは定かではないな。

 まぁ、おそらく後者だろう。

 モコなら、木を一瞬で消滅させるレベルの火魔法がつかえる。

 広範囲でそれを行えば、木々が一瞬で消滅し、広範囲の焦土が完成するだろう。


 まあ、この世界の図鑑なんてそんなもんだろうな。

 テトモコの種族はおいといて、よく見ることができる種族の魔物は追加情報として素材や戦い方などが載っている。

 しかし、詳しい絵や生息地などは記載がない。

 まあ、ネットの無いこの世界で、情報を集めるのも大変なのだろう。


 俺はただ一人の部屋で、黙々と本を読んでいく。


 部屋の外から、元気な鳴き声と、ティナの声が聞こえてくる。


「ソーラー、ただいまー」


 扉をあけ、俺に飛び込んでくる天使。

 暖かいな。心が。

 ティナに遅れ、テトモコシロも飛び込んでくる。

 うちの子たちの大集合だ。

 みんなを撫で、ぞんぶんに甘えさせる。


「ソラ、明日の朝、ここに客がくるから宿にいてくれ」

「ん?」

「そうなの。ここにいようね」


 質問をしようとするとティナに止められる。

 ティナの笑顔が眩しい。

 テトモコシロも喜んでいるみたいでご機嫌だ。

 状況は知らんが良いことなんだろう。


「わかった。ここにいるよ。ルイありがとな」

「ああ、オレも楽しかったからな」

「もう帰るのか?」

「おう、昼からは休みだし、飲みに行くよ。それと、嬢ちゃんに口止めしとけよ」

「ん?何をだ?」

「ドーラ」

「……ドラゴンのことは広めない方がいいのか?」

「そうだった、お前は非常識の塊だったな。広めない方がいい。よく知らないが、討伐したのではないのだろう?」

「うるさいわ。誰が非常識の塊だ。まあ、討伐してないよ。ドーラは知り合いだ」

「お前を探るのはやめよう。ソラも俺にあまり情報を与えないでくれ。」

「なんでだよ。友達じゃん」

「……若い友達ができたもんだな。だが知りたくないこともある。国に報告せねばいけない内容もあるからな」

「ふーん。国にね」

「そうだ。じゃー、オレはもう行くぞ」

「バイバイっ」


 ティナが笑顔でルイを見送る。

 テトモコシロも手を振っているようだ。

 ずいぶんとなついたみたいだな。

 まあ、元からルイとは仲良かったか。


 俺たちはそのまま、宿の部屋で俺作ご飯を食べ。一日をまったりタイムとした。


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