想念の所在地 測りかねる光年
白夏緑自
8月26日
8月26日
久しぶり。元気かな。アナタがこの手紙を読んでいる時、私は生きていますか。
ごめんごめん、いきなりでビックリしたよね。小心者のアナタのことだから、手紙を受け取ってもすぐに読んでくれていないんじゃないかなって思って。私が死んだ報せを聞いて初めて、封を切ることもアナタはしそうだし。
アナタのいる都市から補給線は伸ばし続けるから、これからはその逆を辿って手紙を届けてくれるそうです。不定期だけどね。手で文字を書くなんて久しぶりなうえ、揺れる車の中で、膝の上に紙を広げて書いているから字がぐちゃぐちゃなことは許してほしい。
さて、私たちはアナタが選抜落ちした人類の大反抗。もしくは最終決戦、なんて呼ばれている戦いの最中です。たぶん長い歴史から見ればそんな大袈裟な名前が付いた戦いを何度もやっているんだよね。
それは僕が教えたことだって? そう、これはアナタが教えてくれたこと。でもね、ひどいんだよ、この話をしても誰も信じてくれない。友人になったアイって娘にアナタがどのようにして調べて、こんな証拠もあるんだよって教えても「もし本当だとして、アンタの彼氏がどうして調べられるの?」だって。そんなのちっちゃなことなのにね。
ついでにアナタはもう一つ、私に文句を言うでしょうね。僕が第3深度情報ベースにアクセスできるのは絶対の秘密だって。知っているのは君と僕と、ミフネ教官。あとは都市の深く暗いところに居座る偉い人たちだけ。深く暗いところだって。文章を書くのも久しぶりだから、ついアナタみたいな言い回しになっちゃった。
ちなみに、私は秘密を知られても問題ないと思っています。だって、生き残る人なんてほんの数人しかいないだろうから。もし、私の話が、アイが誰かに向けて書く手紙の話題になっても検閲で消されるか、冗談で流されてしまうでしょうし。信じる人なんていないよ。
そろそろ紙幅も尽きてきたので、このあたりにします。
この手紙はいつアナタに届くのかな。2日後? 3日後? お返事を待っています。
もし、許可が下りたら、返事を受け取る前に新しく手紙を送ります。
ちゃんと、名前を考えておいてね。
それでは、お元気で。
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