ペットモンスター召喚!

 外が騒がしくなってきた。

 どうやら、普段は制御してある兵器が迎撃しているようだ。

 だが、ブラックエンペラードラゴンなんてバケモノを相手に守り切れるかどうか……。


「ラスティ様、このままでは防衛線を突破されます」

「マジか。敵は何体だ?」

「確認できた数で二体です」


 二体もいるのかよ。

 最近、魔界の様子がおかしいとは聞いていたが……ここにきてモンスターが奇襲しに来たか。


 外へ出ようとすると、ルドミラが血相を変えてやってきた。


「大変です、ラスティくん!」

「ああ、アルフレッドから聞いた。ブラックエンペラードラゴンの奇襲だな」

「はい……。敵の反撃により防衛兵器が破壊されつつあります」


 そこまでなのか……。

 確かに、俺の『無人島開発スキル』も警告を発していた。ただちに行動しなければ防衛兵器が喪失すると。まずいな。


「こうなったら騎士団にも防衛を要請する」

「では、私は街の方へ参ります」

「ああ、まて。一応、こんな時のために地下シェルターも作ってある。民の避難も優先してくれ」

「了解しました」


 ルドミラは急いで外へ向かった。


「アルフレッド、全員を城の地下へ。俺はスコルやハヴァマールを連れてドラゴンの迎撃へ向かう」

「分かりました。迅速に対応いたします」


 城内のことはアルフレッドに任せ、俺はスコルと共に部屋を回った。

 ハヴァマールとルサルカさんと合流。

 大広間へ向かった。


「ど、どうしたのだ兄上……! これはいったい!?」

「ブラックエンペラードラゴンの奇襲だ。だから今は聖戦どころではない」

「な、なんだって!? 魔界のドラゴンではないか!」

「知っているのか、ハヴァマール」

「うむ。魔王ドヴォルザークの従順なるペット。あまりに危険なので魔王ですら手を焼いていたという。そんな噂を聞いたことがるのだ」


 そんな狂暴なモンスターなのかよ。

 魔王はいないから、今は自由の身というわけだ。

 それにしたって、どうして島国ラルゴを狙う?

 いや、そんなことは後でいいか。


「とにかく、俺は外の様子を見に行く。みんなの力も借りたい」


 スコルは「もちろんです!」と賛同してくれた。ハヴァマールも「当たり前なのだ~」と。


「あ、あーしは……お役に立てないかと」

「ルサルカさんは城内の地下へ避難してくれ」

「そうさせてもらいます」


 ぺこりと頭を下げ、彼女は地下へ向かった。

 それから入れ替わるようにしてストレルカがやってきた。


「ただいま帰りましたわ、ラスティ様」

「ストレルカ! 仕事でもしていたのか?」

「ええ。わたくしは商船の方を担当していますので……。いえ、それよりもドラゴンです! ドラゴンが島を襲っているのです!」


「そのことだ。今から様子を見に行く」

「よ、様子を!? 危険です!」

「分かっている。でも、このままでは兵器が破壊される。多分もう持たない」

「そんな……」


「無理せず地下へ避難してくれてもいい」

「わたくしは常にラスティ様のおそばに」

「ありがとう」


 これで決まりだ。

 俺、スコル、ハヴァマール、そしてストレルカで迎え撃つ。


 ――と、思ったが。



「水臭いじゃないか、ラスティ!」

「そうですよ、我々もご一緒に」


「テオドール! エドゥ!」


 歩み寄ってくる二人が頼もしく見えた。いや、実際頼もしすぎるんだが! ありがたい! 戦力は少しでも多い方がいい。


「そうだ、テオドールに頼みたいことがある」

「ん? 私にかい?」

「冒険者にこのことを伝えてくれ」

「なるほど、任せてくれ」


 複数のペットモンスターを召喚するテオドール。どうやら、鳥系のペットを使って情報を伝達するつもりらしい。さすがだ。


「あれ、そのフクロウ見たことあるぞ! 目が光って喋るやつ!」

「ストームアウルさ。知能が高く、飛行能力に長けているから、すぐに情報を伝えられる」


 フクロウは俺のところへ来て挨拶してきた。



『ヒサシブリダナ! ヒサシブリダナ!』



 そうか! 昔、騎士団長時代のルドミラの手紙を送ってきたフクロウは、テオドールのペットだったんだ!

 こんなところで謎が解けるとは……いや、感心している場合ではないな。


「頼んだぞ、フクロウ!」

『マカサレヨ! ワレワレニ、フカノウハナイ!』


 窓から飛翔していく複数のストームアウル。



「次は自分の番ですね」



 エドゥが杖を召喚して、俺に目配せする。なるほど、テレポートしてくれるわけか。



「俺たちを防衛兵器付近まで運んでくれ、エドゥ」

「承知しました。では、みなさん……少し離れてください」



 目の前に『ディメンションポータル』が開かれ、柱が立った。この中へ飛び込めば一瞬でブラックエンペラードラゴンのところへ行ける。



「俺が先に行く! みんな後からついてきてくれ!」



 ゲイルチュールを握り、俺は先行していく――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る