女性エルフたちを救出

 中庭に、俺、スコル、エドゥ、クリス、セインが揃った。今回、エルフの国ボロディンへ行くメンバーだ。パーティを結成し、これで出発の準備は整った。


「全員、問題なさそうだな」


 ルドミラに島国ラルゴを任せることに。

 ある程度の権限を付与した。


「ラスティくん、こちらはお任せください」

「ああ、任せたぞ、ルドミラ」


 それから俺はエドゥに合図を送った。

 今回はストレルカの船ではなく、エドゥの“転移”で向かうことに。偶然にもエルフの国ボロディンの座標を持っているようだ。

 ラッキーだったな。

 転移なら直ぐに到着できる。


「では、ディメンションポータルを開きます」


 なにもないところから杖を召喚し、エドゥは庭に光の柱を展開した。あそこへ飛び込めば一瞬でボロディンだ。


「クリスから入ってくれ」

「わ、分かりました!」


 はじめての経験なのか、クリスは緊張していた。ぐっと拳を握りしめ、彼女はディメンションポータルへ飛び込んだ。

 続いてセインも。


「よし、スコル。俺たちも」

「はいっ、ラスティさん」


 俺はスコルの手を引いて、光の中へ飛び込んだ――。



 ◆



 噴水のような鮮血が飛び散っていた。

 目の前に若い女性エルフが倒れ、俺の前で息絶えた。

 ズシンと重みのある足音と共に、怪物が現れた。


「……ぐふふふふ」


 その手には血のべったりついた包丁。そうか……あれは『ブラッディナイフ』だ。つまりあの筋肉質な灰色人間がオークマザーか。


「く、くそっ……あの女性を守れなかった。ボロディンが襲われている最中とは!!」


 セインがオークマザーと交戦していた。

 飛び出て早々とはな……!



「ラスティさん、これは……」

「オーク共に襲われているんだ。俺も戦う! スコルはクリスと共にいるんだ」

「わ、分かりました!」


 スコルは素直にうなずいた。


「クリス、スコルを頼めるか」

「もちろんです! 小生は、これでも剣士でありますから!」

「そうだったな! 頼むぞ」


 と、言いつつも俺は二人を守りながらオークマザーを相手にした。

 ゲイルチュールを握り、エルフを救出していく。


 ひとり、またひとりと。


「た、助かりました……」

「いいってことさ。さあ、さっさと逃げるんだ」

「はい……!」


 オークマザーは、いったい何体いるんだ?

 見えるだけで十、二十はいるぞ。


「お前……エルフではないな!!」


 そんな中、オークマザーが俺に話しかけてきた。コイツ、話せるのか。


「俺は人間だ。このボロディンを救いに来た!」

「これは美味しそうな美男子ねェ。食べちゃいたいわ……!」


 恐ろしい目線に、俺は背筋が凍った。嫌すぎるわ!!


「黙れ。それよりも、エルフに危害を加えるんじゃねぇ!」

「ふん、エルフが悪いのよ。我々、オーク族を魔界に追い込むから!!」

「知るか、お前達は元から魔王から生み出された魔物だろうが!」


 つるはしで俺はオークマザーを引き裂いた。一撃で倒せているのが救いだ。



「うぎゃあああああああ!!」



 塵になっていくオークマザーだが、次から次へと沸いてきやがる。キリがねぇ!!



「それなら、これしかねぇよな――サンダーボルト!!!」



 風属性の範囲魔法攻撃を放つ俺。稲妻がオークマザーだけを狙い撃ちし、粉々にした。



「「「「「ぎゃあああああああああああああ!!!!!」」」」」




 ふぅ、とりあえず周囲のオークは粉砕した。



「お……おおおおおおお!!」

「あの少年がやってくれたの!!」

「すごーい、オークマザーが一瞬で!!」

「きゃー、素敵!!」

「あの子供は誰!?」

「ど、どこかで見た事があるような……」

「ああ、前にボロディンにいなかった?」



 女性エルフが俺を囲う。

 みんな美人で可愛い。

 こんな美しい女性達を殺すなんて、オークマザーたちめ……許さんぞ。

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