ハーフエルフの騎士

 俺はまず、無人島開発スキルで木材を消費。即席の木刀を生成した。

 それを握り、そのままセインに一撃を与えた。


「……!!」


 これは驚いた。

 不意打ちだったとはいえ、セインは木刀で防御していた。

 なんて反射神経だ。

 さすがルドミラといい勝負を繰り広げていただけはある。


「な、なにをするんですか!?」

「セイン、君の力を試す」

「た……試すって。なぜ!」


 今度はゲイルチュールを召喚し、俺はつるはしを握った。更にセインに攻撃を加えていく。

 彼は俺の攻撃をかわして、かなり距離を取った。

 遠くでこちらを立ち見している騎士の方へ向かい、剣を奪っていた。


「こ、こら! セイン!!」

「すみません、剣を借りますね!」


 剣を構え、再びこっちに突っ込んでくるセイン。へぇ、やるな。

 ようやく本気を出したのか、剣が俺の目の前に。


「これはなかなか!」

「ラスティ様、これ以上はケガをしますよ!」

「やってみるといい」


 ゲイルチュールをシグチュールに変えて、俺は剣の攻撃を防いだ。


「なっ……! つるはしが槍に変わった!?」

「俺の武器これは特殊なスキルでね。三形態あるんだ」

「すごい……でも!」


 それでも諦めずにセインは剣を振るってきた。根性がある。諦めない心がある。コイツは、他の騎士とはちょっと違う。


 だけど。


「まだまだ鍛える必要がある」


 シグチュールのまま、俺はサンダーブレイクを解放して稲妻を走らせた。

 四方八方に雷が落ち、セインが吹き飛んでいく。

 それも彼は諦めなかった。

 おいおい、ウソだろ。


 しかも、ド根性で宙を舞っていた。


 ……まて。この感じなんだ。


 不思議な力を感じる。

 なんだこれは……!

 この感じ、どこかで……?


「僕は負けるわけにはいかないんです!! ストレルカ様の為にも!」

「ストレルカをやるわけにはいかない」


 ヴェラチュールを使うことになろうとはな。

 剣の形態に変え、俺は一閃を放った。

 斬撃が飛び、セインを完膚なきまでにぶっ飛ばした。



「うああああああああああああ!!!」



 ついに彼は地面を転がり、倒れた。



「やれやれ、意外とてこずった。ルドミラ、あのセイン中々やるな」

「ラ、ラスティくんの攻撃をあれほど耐え抜くとは……私も知りませんでした」

「そうなのか。それにしても、不思議な力を感じた気が」

「そんな力はないと思いますけどね……」


 ルドミラに覚えはないらしい。

 とりあえず、セインを助けてやろう。


「ストレルカ、彼に回復魔法を」

「分かりました」


 歩いてセインのところへ向かうストレルカ。腰を下ろし、てのひらを向けていた。そして、ヒールを施した。

 直ぐに意識を取り戻したようだ。

 俺も向かうと、セインはストレルカの手を握ろうとしていた――ので、俺は阻止した。


「ストレルカになにしやがる」

「……す、すみません、ラスティ様。ストレルカ様がとてもお美しかったので……お礼を言おうと」

「だからって手を握るなっ!」

「そ、そうですよね……」


「そんなことより、ストレルカは諦めろ」


「諦めません! ストレルカ様に改めて結婚を申し込まねば!! ……と、言いたいところですが、僕はボロディンへ帰らねばいけなくなりました」


「む? ボロディン?」


「僕はハーフエルフなんです。ボロディン出身なんです……」


 そうか、ただならぬ気配はエルフの血だったのか。どこか不思議な感じがしたが、魔力が人間とは違うんだ。あの身体能力もきっとエルフの血を濃く継いでいるのだろうな。



「もしかして、オーク騒ぎの?」

「御存知でしたか! そうです。姉が狙われるかもしれません。明日には帰郷しようかと……そのことをルドミラ様にも相談しようかと思っていました」


 セインがまさかのハーフエルフとはな。そいう事情があるなら、彼を連れていくべきか。……うん、そうだな。


「分かった。なら、ストレルカは諦めろ。その代わり、ボロディンへ連れて行ってやる」

「ほ、本当ですか!? ……ストレルカ様は諦めます」


 その一言により、交渉は成立した。

 なら、セインも連れていく。

 決まりだ。

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