武器重量増幅の闇属性魔法スキル

 S級ランクのグレイゴーストに対し、攻撃を続けていくルドミラ。彼女の覚醒アマデウスの凄まじい剣閃が大鎌と激突する。


「ル、ルドミラさん……凄いです」


 そばで支援を繰り返すスコルは、そんな風に声を漏らす。俺も同じ感想だ。ルドミラの剣技はいつ見ても目を見張るものがある。

 あのS級のグレイゴーストと同等に渡り合っている。さすが勇者にして元帝国の騎士団長だ。

 だが、モンスターの方も容赦なく魔法スキルを発動して周囲に闇属性魔法をバラまいていた。これは範囲攻撃か!


 スコルたちに当たらないよう、俺は闇属性魔法をヴェラチュールを振るって潰していく。これでヨシっと……む?


「武器が重くなってる……?」

「兄上、ヤツが放つ魔法を斬ってはいかん! あれは武器の重量を増幅させる厄介な魔法攻撃なのだ!」


「な、なんだって!?」


 そんなスキルを使ってくるモンスターがいるだなんて、はじめて聞いたぞ。

 重量を上げてくるとか面倒な。


「物理攻撃は推奨できない。魔法を使うのだ!」

「分かったよ、ハヴァマール」



 俺はサンダー系の魔法スキルを使い、闇属性魔法を粉砕した。一方で、ルドミラがグレイゴーストにダメージを与えていく。

 けれど、一向にグレイゴーストが消滅する気配がない。……どういうことだ?


「ルドミラ、ダメージは入っているんだよな?」

「ええ、かなりの攻撃を加えました。しかし、倒せません!」


 なぜだ。あれだけの斬撃を与えて倒せないっておかしいだろう。疑問に感じていると、ハヴァマールが答えを教えてくれた。


「モンスターの解析が完了したのだ。あのグレイゴーストの体力はかなり高いのだ。ルドミラのさきほどの攻撃で少し削ったところだな」


「今ので少し!?」


 おいおい、冗談だろ?

 スコルのフル支援を貰い、ルドミラの覚醒アマデウスで“少し”しかダメージが与えられていないのかよ。S級とは、それほどのステータスを持つのか。

 これが幻影ダンジョンのモンスターというわけか。

 身に染みたぜ。


「くっ……不覚。私の修行不足です。お許しを」

「いや、ルドミラのせいではない。この幻影ダンジョンが異常すぎるんだ」

「やはり、前衛は私ではなくラスティくんがよろしいかと」

「俺かよ。……分かった。ルドミラはみんなを守ってくれ」

「命にかえても」


 俺と交代するルドミラ。

 正直、ボス戦まで楽をしたかったから前衛を彼女に任せていたのだが、こう頼られては仕方ない。

 ここは本気でいきますかっ。


 ヴェラチュールに変え、俺はグレイゴーストと対峙した。敵は俺に狙いを定め、鎌を振るってくる。対し、俺はヴェラチュールで受け止めた。

 火花が散り、甲高い音が響く。


「おぉ、さすが兄上なのだ!!」

「これは中々重いな」


 ただでさえ武器が重くなっているのに、敵の攻撃もかなり重い。


「ラスティくん、気を付けてください。その極端な重さでダメージを与えられなかったのです」

「そうか! あの闇属性魔法が付与されていたんだな」


 武器重量増幅を付与され、それでルドミラはたいした火力を出せなかったのかも。しかし、極端な重さとな? 俺はそれほど重さを感じないが。

 確かに、少々ズシリはするけど。


 とにかく、ヤツを撃破しないと!


 風属性をまとわせ、俺は正面から向かいグレイゴーストに剣を振るった。当然、向こうも鎌で迎撃してくるが、俺はさらに加速して攻撃を加えた。


『――――ギィ!』


 想像を超えるスピードで反撃してくるが、鎌攻撃を回避。そのまま魔法スキルを下した。



「くらえ、サンダーストーム!!」



 広範囲の風属性魔法スキルを降らせ、グレイゴーストにダメージを与えた。

 猛烈な轟雷が敵の体を蝕む。これなら!



『グアァァァ……!』



 塵となっていくグレイゴースト。

 俺の攻撃により滅びた。



「いっちょあがりっと!」



 なんとか倒せた。

 一安心していると、みんなが駆け寄ってきた。



「あのモンスターを一撃だんて、ラスティさんカッコいいです!」

「さすが我が兄上!!」

「やはり、ラスティくんには負けますね」

「素敵です、ラスティ様っ」



 スコル、ハヴァマール、ルドミラ、ストレルカから賞賛され、俺は照れた。そんなに凄かったかな?

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