牢獄スキル『アルカトラズ』

 モーリスが奇妙なスキルを使い、スコルを透明な牢に閉じ込めた。……なんだ、このスキル。見たことないぞ。


 スコルは怯えて抵抗できない。

 一刻も早く救出せねば。


 俺はモーリスと対峙する。なんて巨漢だ……迫力がある。けど、それで怯むような俺でもない。


 接近して、ヴェラチュールで突きを入れるがモーリスは回避した。こ、こいつ……速い。

 何度も攻撃を繰り返すが、全て避けられた。


「その程度の攻撃速度、俺には当たらん」

「なるほど、回避力はあるようだな」


 冒険者によっては回避を極めている者もいる。つまり、攻撃速度も高いタイプだ。

 俺の予想通り、モーリスはダガーナイフを振り回してきた。なんて速度だ。


 辛うじて避けられたが、俺の服が引き裂かれた。


「ほう、この俺の攻撃を避けるとはな! お前もやるようだな」

「それより、スコルをあの牢から出せ!」

「あの『アルカトラズ』から抜け出すことは不可能さ。俺が解除しない限りな」

「……マジか」


 つまり、この男を倒さなきゃスコルは救い出せないのか。やるしかない。


 その前にルドミラは……グレイと交戦中。

 向こうの敵は片手剣と盾を使うのか。

 つまり、職業的には剣士なのか。


「なによそ見してやがる!!」


 モーリスの短剣攻撃が迫っていた。

 ヴェラチュールで防御し、敵の武器を弾いた。


「これでお前の武器はなくなった」

「弾いたくらいでイイ気になるんじゃねぇ! くらえ、ウォーターキャノン!!」


 右手から魔法スキルを出すモーリス。

 壊れた噴水のように水の塊が俺の体に命中した。



「ぐあッ!!」



 かなり飛ばされて、俺はブラッドレイの頭の上に着地した。



「――おい、貴様」

「すまん、ブラッドレイ。ちょうど良かったから」

「ふざけんなッ!!」


 槍で攻撃されたので俺は躱して地面へ着地。


「まあ、まて。疑って悪かった」

「人の頭に着地しておいて言うことか!」

「ブラッドレイ……お前、仇を取りたいんだろ」

「そうだ。妹の仇だ。だからよ、ラスティ……モーリスは俺に任せろや!!」


 凄まじい闘気を発してブラッドレイは突撃した。……アイツ、思った以上に強いな。いや、さっき交戦したときにも感じたけどな。あの念属性の槍も神器に等しい。


 まあいい、モーリスはヤツに任せて俺はスコルの救出だ。


 透明な牢・アルカトラズを破壊せねば。


「ラスティ、私の手が空いてしまってね。手助けしよう」

「そりゃ助かるよ、テオドール!」


 二人でアルカトラズへ向かい、スコルの無事を確認。気絶していた。


「ふむ。このアルカトラズというスキルは“結界”みたいなものか」

「結界?」

「バリア系スキルだな。自分の身を守ったり、こうして閉じ込めることも可能だ。しかし、これは閉じ込め専用らしいな。なので、これはさしずめ牢獄スキルといったところだろう」


「そうなのか」

「破壊は難しいかもしれん。やはり、術者を滅せねばな」

「俺のヴェラチュールで……」

「やめておくんだ。ラスティの槍は非常に強力ゆえ、スコル様を大怪我させてしまうぞ」


 ……それはダメだ。

 ということは無理に破壊すれば、スコルの身に危険が及ぶ。となれば……モーリスをぶっ倒すしかないわけだ。


 ブラッドレイは、あの槍で見事にモーリスを追い詰めている。まさか、勝てるのか?


「モーリスてめえ、よくも!!」

「君もしつこいね、ブラッドレイ。そんなに妹の仇が取りたいのか」

「あたりまえだ! お前は婚約者だったはずだ、モーリス!!」


「……ああ、そうだ。俺とお前の妹……シャーレイは愛し合っていたさ」

「なぜ殺した!!」


「なぜ? そんなの決まっている。愛していたからこそだ」

「意味がわかんねぇよ!!!」



 怒り狂ったブラッドレイは、槍を棒のように振るってモーリスの腕に命中させた。彼は吹き飛んで地面に何度も激突。



「ぐあああああああ……!」



 やっぱりブラッドレイは強いな。



「これで詰みだ、モーリス」

「……それはどうかな」


 直後、グレイが現れてブラッドレイを蹴り飛ばした。



「なに!? がふッ!!」



 馬鹿な、グレイはルドミラと戦っているはず。振り向くと、そこにはグレイの姿。……二人のグレイ?



「フフフ、俺様達を甘く見たようだね」

「どういうことだ!!」


 俺が聞くと、グレイはニヤリと笑った。


「俺様達は殺人ギルドだよ。このくらいの特殊スキルは持ち合わせているのさ」


 分身するグレイ。

 まさか、分身スキルなのか……!


 グレイは三人になった。

 ウソだろ……そんなスキルがあるだなんて。

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