幻影編(続・最終章)
ニセモノの主に天誅を!
特別で新しい朝を迎えた。
ニールセンが倒れ、神聖王国ガブリエルが消失して世界が平和になった。世は、復興の為に力を合わせている。
あとはシベリウスに任せよう。
俺たちは島国ラルゴへ戻る。
城の庭に全員が集合していた。
「お待ちしておりました、ラスティ様」
「アルフレッド、みんな。俺たちの島へ帰ろう」
俺は、エドゥに転移の指示を出した。
「分かりました。では、皆さま。自分のどこでもいいので触れてください」
みんなそれぞれエドゥの肩や背中に触れる。
そして、グロリアステレポートによる転移が始まった。
* * *
テレポートが完了すると、そこは浜辺だった。
ここは間違いない。島国ラルゴだ。
帰ってきたんだ……!
「海だー!!」
俺が叫ぶと「懐かしいですね、ラスティさん!!」とスコルがバンザ~イと両手を上げて
その隣で「やっぱり、この島が一番なのだあ!!」喜んで海の飛び込むハヴァマール。おいおい、いきなりだな。ストレルカも海に入ってハヴァマールと水の掛け合い。
テオドールとアルフレッドは、浜辺で大の字になっていた。
みんな、やっぱりラルゴを愛しているんだな。
「ラスティくん、私は騎士団が気になるので先に向かいます」
「分かったよ、ルドミラ」
そういえば、ラルゴの騎士団長だったことを思い出した。あれから、どうなったかな。あとで見に行くか。
そういえば、ラルゴの冒険者達も戦場に転移してくれていたっけ。あれから、直ぐにスケルツォのワープポータルで帰還していたけど。改めて礼を言わないとな。
そんなことを思っていると、袖を引っ張られた。エドゥだ。
「世界聖書の件ですが」
「そうだった。配信をやるんだったな」
「ええ、もし権限を与えるのなら、トレニアさんの運営する冒険者ギルドに」
トレニアは、ラルゴのギルドを管理してくれていた。やっぱり、彼女にはそういった仕事が向いているようだし、適材適所だ。
だからこそ、信頼もできるし彼女なら、正しく『配信』を使ってくれるだろう。
「決まりだな。スコルを連れて冒険者ギルドへ向かおう」
「了解です。しかし……みなさん、羽根を伸ばしておられますから」
俺ももう少しだけ休憩したい。
せっかくラルゴに戻ってきたのだから。
時間を忘れてスコルたちと海で遊び、日ごろのストレスを発散した。
気づけば昼を過ぎてしまっていた。
まずい、遊び過ぎた!!
俺たちの城へ戻ると、みんなお風呂へ行ってしまった。そりゃ、そうか。海水に浸かってベタベタだからなぁ。当分は帰ってこないだろう。
ハヴァマールから「兄上も一緒に」と風呂に誘われたが、俺は断った。先にやるべきこともあった。
随分と島国ラルゴを空けてしまっていた。
管理権限を全て俺に戻し、現在の状況を探った。
無人島開発スキルで島全体の状態を確認。
まず、防衛力はそれほど落ちていなかった。どうやら、街の人たちが兵器や防衛設備、それに建物を一生懸命、維持してくれたようだ。騎士団のおかげで治安も守られている。あってもモンスターによる被害が少々。
……ふむ、悪くないな。
街の規模は、かなり進展している。
建物は拡大しており、店も増えた。病院や学校、教会も増えている。カジノまで出来たのか。いつの間に。
グラズノフ共和国との貿易も盛んだ。
食材、調味料。木材や鉄の取引も増えている。
ダンジョンも増え続けている。
地下ダンジョンの他にも、洞窟ダンジョンや海底ダンジョンも出来ていた。
確認しながらラルゴの街を回っていると、俺の目の前で事件は起きた。
男がお店の店員さんにポーションを投げつけていた。それは女の店員にぶつかって、激しく割れていた。なんてことしやがる。
「きゃっ!?」
「この馬鹿女! 俺様はこの島ラルゴの主、ラスティだぞ!! さからう気か!!」
なぬ!?
俺は耳を疑った。
あの男、俺を騙ってなにしてやがる!
似てもいないし、ニセモノじゃねーか。
「す、すみません……」
「謝って済む問題か! ポーションの数を間違えやがって。こうなったら、体で払ってもらうしかねぇよなァ!?」
「そ……そんな、やめてください」
俺のニセモノは、女子店員の服を剥ぎ取ろうとした。って、なにしてんだ、このヘンタイ野郎。
さすがに許せんので、ヴェラチュールで突いた。
少しだけ突き刺すと、男は物凄いスピードで吹っ飛んだ。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ…………!!!」
地面をえぐるようにぶっ飛び、鍛冶屋の中へ。運悪くドワーフが精錬中で振りかざしていたハンマーが男の頭に命中。男は泡を吹いて倒れた。本当に運の悪い。
「あ、ありがとうございました」
「君、ケガはないかい?」
「は……はい。おかげさまで」
「それならいい。じゃあ、俺は行くから」
「あ、あの……あなたは?」
そっか、俺を知らない人もいるんだな。
名乗るべきか悩んでいると、背後から声を掛けられた。
「ラスティくん!!」
「んぁ!? ――って、ルドミラじゃないか」
振り向くと、そこにはいつものビキニアーマー姿のルドミラがいた。なにやら、慌てた様子で。しかし、それよりも女店員さんが驚いていた。
「えっ……もしや、本物のラスティ様ですか?」
「そういうことなんだ」
「わぁ、やっぱりそうだったのですね。あんな人相の悪い男がラスティ様のわけがないと思っておりました。それに、お優しい方だと噂を聞いていましたから」
女店員さんは、俺の手を握ってお礼を何度も言ってきた。なんだか、いい気分だ。
そんな良い雰囲気の中、ルドミラがジトッとした目を向けてきていた。……おや。
「……ラスティくん」
「ちょ、ルドミラ。顔が怖いぞ」
「大至急で相談があるのです。よろしいですか」
ルドミラの相談なら断れないな。
俺は女店員さんに「またね」と告げて、この場を去った。さて、どんな話やら。
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