フィールド魔法の濃霧が漂う場所にて

 スコル、ハヴァマールを連れて戦場から離れていく。

 ちょっと心配だが、ストレルカもエドゥもレベルが高く、強い。なにかあってもルーシャスが庇ってくれるはずだ。


 今は信じて先へ進む。


 道は険しい。

 相変わらず濃霧が漂っているし、下手をすれば迷ってモンスターの餌食になる可能性もある。


「二人とも、俺についてくるんだぞ」

「はい、ラスティさん。絶対に離れません」


 いい返事をしてくれるスコル。

 一方のハヴァマールは、足を止めていた。



「どうした、ハヴァマール」

「……兄上。妙だと思わんか」

「なにがだ?」

「この霧……いくらなんでも濃すぎる。自然界の霧ではないと思うのだ」


「どういうことだ」


「うむ。これはフォグスキルの可能性が高い」

「フォグスキルってなんだ」


「このような霧を発生させるスキルのことなのだ。発動すると、闇属性の者が有利になったり、他人が霧に入り込むと不運が起こったりなど、そういう現象が起きる。つまり、これは意図的に張られたモノだろうな」



 そうか。

 特殊スキルの『フィールド魔法』か。

 かなり上位のスキルだって聞いたことがあるな。使用できる者もほとんどいないと、その昔、アルフレッドから聞かされたことがあったな。


 こんなことが出来るのはニールセンか。



「気を付けた方が良さそうだな」



 微量の魔力をアテに先へ進んでいく。

 この先に誰かいることは理解している。でも、それが何者であるか分からない。敵なのは確かだが……。クソ、この霧のせいで分かり辛い。



 少し歩いたところで気配が強まった。


 ……これは、まさか。



『――――』



 霧の向こうに明らかな殺意を感じた。

 間違いない、敵だ。



「……! 兄上、気を付けるのだ。物凄い魔力が接近しているのだ!」

「ああ、これは今までの敵とは桁違いだ。だが、ニールセンではない……」



 足音せず、何かが接近してきた。霧の中から、人影が見えてきた。……どうやら、人間ではあるようだが――。



『美しく気高い闘気ですね。なるほど、ラファエルが珍しくピリついていると思えば、第三皇子でしたか』



 女の声……?

 って、コイツは驚いた。


 そこに現れたのは『エルフ』だった。


 スコルと同じように耳が尖っていて、でも、瞳の色だけは違った。赤色で、どこか不気味だった。



「エルフ……」



 スコルも相手を見て察していた。

 やっぱり、同族なのか。



「やれやれ、そこの金髪のエルフ。この私を同じエルフと思わないでください。私は『ダークエルフ』なのですよ」


「ダ、ダークエルフ……」



 あまりお目に掛からない種族を前にして驚くスコル。いないことはないが、本当に珍しい。まさか、ダークエルフとはな。


 ただ、イメージと違って白肌だし、スコルのような純粋なエルフとほんとど変わりない。どこがダークなのやら。



「そうですよ、私は『ミカエル』というダークエルフ。神聖王国ガブリエルの愛国者。そして、世界をニールセン様の色で染め上げる為に補佐する大幹部のひとり」



 手をスコルに向けるミカエル。こいつ!!


 俺は直ぐにスコルを庇って回避した。


 直後、恐ろしい程の魔力が横切っていった。……あっぶね。少し遅かったら、やられていたな。



「……きゃっ! な、なんて魔力……」

「危なかったな、スコル」

「びっくりしました」


「ハヴァマール、スコルを頼む。俺がミカエルの相手をする」

「分かったのだ。スコルは余が守るのだ」



 俺はゲイルチュールを召喚して構えた。



「この私とやる気ですか」

「ああ、あんたを倒して今度こそニールセンの居場所を吐かせる」

「いいでしょう。私に勝てたらお教えします」


「ん? 妙に素直だな。なら、瞬殺してやる……!」



 最初から本気でいく!!

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