ワープポータル Lv.5

 俺は改めてスケルツォに聞いた。


「教えてくれ。俺は歓迎されているかどうか」

「ルーシャスから話は伺っております。陛下が不在である今、ラスティ様のお力が必要であることも」


「ニールセンの軍勢が直ぐそこなんだろ? 今すぐに国境へ向かい、俺たちが加勢すればいいか?」


「そうですね。ラスティ様が神聖王国軍を壊滅あるいは撃退できれば、戦況は大きく変わります。ですが、戦場はルーシャスに任せ……ニールセンを直接叩く方が賢明かと」


 確かに、いちいち兵を相手するよりも王を潰す方が手っ取り早い。となれば、俺たちはニールセンを追う方がいいわけだ。


「スケルツォ、言っておくが……俺はドヴォルザーク帝国の為に動くわけではない。俺のラルゴの未来の為なんだ」


「存じております。ラスティ様は今、理想郷をお作りになられたと」

「知っていたか」


「ええ。ですが……願わくばドヴォルザーク帝国も導いて欲しい」

「その話は後だ。今はニールセンを倒す。それが優先だろ」

「……なるほど、ラスティ様は変わられたのですね」

「俺はもう昔の俺ではないよ」


 頷くスケルツォは、優しい瞳で俺を見つめてきた。


「分かりました。では、打倒ニールセンをお願いいたします」

「任せろ。ヤツをサクっと倒して世界を平和にしてやる」

「なんと頼もしい。では、国境付近のワープポータルを出しましょうか」


 ワープポータル。

 つまり、テレポートの上位版だな。ダンジョン前など『場所』を記録メモしておくことができ、魔力と触媒があればいつでも開ける転移の扉だ。


 さすが魔法すらも使いこなす“轟雷の魔女”だな。



「ちょっと待ってくれ」



 俺はスコルたちの方へ向き直って、確認した。



「わたしたちはラスティさんについて行きます」

「スコルの言う通りなのだ。余も兄上を全力でサポートするでな」



 スコル、ハヴァマールに続きストレルカとエドゥも笑顔を見せてくれた。みんな、気持ちは一緒だ。



「ありがとう、みんな。というわけだ、スケルツォ」

「了解です。では、ここにワープポータルを開きます」


 手をかざすスケルツォは、魔力を解放してこの場にワープポータルを出した。

 巨大で青白い光が柱となって現れた。


 あの中へ飛び込めば、一瞬でドヴォルザーク帝国の国境付近に転移できるというわけだ。


「す、凄いです。こんなスキルは初めて見ました」


 スコルが驚いていた。

 傍らでエドゥがドヤ顔をしていたが、どういうことだ?


「エドゥ、どうした」

「このワープポータルは、もともと自分のスキルなのです。スケルツォに譲渡したんですよ」

「マジか! そうだったのか」

「ええ。自分にはグロリアステレポートがありますからね」



 そういえば、そうだったな。

 しかもグロリアステレポートの方が触媒要らずで燃費もいいようだ。大賢者の特権だな。


 ついでに、ワープポータルの詳細を見せてもらった。



 [ワープポータル][Lv.5]

 [補助スキル]

 [効果]

  特定の場所へ転移可能。触媒に『パライバトルマリン』が必要。最大十五人を転移できる。特殊ダンジョンのメモは不可。


 Level.1:拠点へ帰還

 Level.2:エリアメモ①

 Level.3:エリアメモ②

 Level.4:ダンジョンメモ①

 Level.5:ダンジョンメモ②



 なるほど、グロリアステレポートよりは劣るわけだ。それでも十分な転移スキルだが。


「よし、ワープポータルに飛び込むぞ! 俺が先に行く。みんな、後に続いてくれ!」



 俺の後にスコル、ハヴァマール、ストレルカ、エドゥが続いた。


 ――って、シベリウスも!?


 てっきり来ないかと思ったんだが、なにか思うところがあるのだろうか。


 とにかく、ドヴォルザーク帝国の国境へ!

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