みんなと共にドヴォルザーク帝国へ
ブレアの許可を貰い、会議室を借りた。
全員が集合し、中にはマーカス将軍やゲルンスハイム帝領伯もいた。
「みんな、集まってくれて感謝する。今から話すことは、これからのことだ。知っての通り、昨晩はニールセンが共和国を襲った。
そして今もドヴォルザーク帝国に進軍中。小さな村や街は襲われている。
このままでは帝国が落ち、次は共和国……最後には俺たちの島へ向かってくる。なら、その前にヤツ等を叩く」
俺が全員を見つめると、ハヴァマールが手を挙げた。
「あ、兄上。我らは島を守るために材料を集めていたはずなのだ」
「自分の故郷だけ守っても、結局は大量の難民が出てしまう恐れがある。その何万もの難民を受け入れるほどのキャパシティはないよ」
「なるほど。言われてみれば確かになのだ。仮に帝国や共和国の何百万もの難民が出ても、ラルゴでは全員は受け入れらない」
「そういうことだ。それに、帝国が落ちれば世界のバランスも崩れる。今日、ゲルンスハイム帝領伯から手紙を受け取った。
差出人は、レオポルド騎士団の団長ルーシャス・スナイダーからのものだった」
騒然となる会議室。
全員が驚いていた。
スナイダー家の名はみんな知っている。知っている人が大半だからこそ、ビックリしたのだろう。
アルフレッドと関わりのある者は特に。
「ラスティさん、ルーシャスさんって……確か」
「その通りだ、スコル。アルフレッドの兄だ。一度、戦ったことがあるな。今は味方だ。俺に助けを求めてきたんだ」
「そうだったのですね……」
「それで、俺に皇帝になって欲しいと」
手紙の内容を明かすと、全員が驚いていた。
「こ、皇帝!? それは本当ですか!?」
普段は冷静なストレルカが大声を出していた。そこまで驚くなんて。それもそうか。
「ああ、本当だ。帝国には皇帝が必要のようだ。それが俺らしい」
「あ、兄上が? ちょっと、待つのだ!!」
さすがのハヴァマールも止めてきた。
この話に一番敏感だろうとは思った。
ハヴァマールは特に、帝国に対する恨みがあるはず。魔王にすり替えられてしまったのだから。
「落ち着け、ハヴァマール。世界を守る為だ」
「で、でも……。そうだ、第一と第二皇子に任せればいいのだ」
「それは無理だ。アイツ等、やらかしすぎて民の支持を完全に失っている。皇帝になったところで、下手すりゃ市民革命を起こされる。暴動の嵐で、取り返しのつかないことに」
「……うぅ。しかし、兄上が皇帝になる必要は……」
「仕方ないだろ。俺がやるしかないんだ」
「兄上……」
しょんぼりするハヴァマールだが、気持ちは分かる。俺だって正直、ドヴォルザーク帝国の皇帝なんぞになりたくはない。自由が良い。
でも平和の為だ。
「そんなわけで、今日にもグラズノフ共和国を発ち……ドヴォルザーク帝国へ向かう。賛同してくれる者はそのまま待機。反対の者は今日、島国ラルゴへ向かう船を用意した。帰ってもらっても構わない」
みんなに強制はできない。
だけど、みんな席を立つことはなかった。
「水臭いですよ、ラスティ様」
「エドゥ……」
「エドゥ様の言う通りですよ、ラスティさん」
続くようにスコルも笑顔を。
「ああ、兄上をひとりで行かせるなんて出来ぬ」
ハヴァマールもなんだかんだついて来てくれる。
「そうですわ。帝国といえば、わたくしの力も必要でしょう。頭のお堅いお父様もコキ使って差し上げます」
父親を牽制しつつも、ストレルカもハッキリ言ってくれた。
「ありがとう、みんな」
そうだった。黙ってもみんなついてきてくれる。この先にどんな危険があろうとも。
「ラスティ、話はまとまったようだね」
「ああ、ブレア。俺たちは帝国へ向かう」
「うむ。私も同行したいところだが、こちらはこちらで動く。しばし待たれよ」
「ありがとう、助かる」
「ただし、紅蓮の騎士・ストラは同行させよう」
部屋の隅に立っていた騎士に注目が集まった。
彼女はビックリして小さくなっていた。
ああ、彼女か。
昨晩に会ったっけな。
「わ、わたしですかぁ!? ブレア様、わたしでは……ちょっと、その……」
「命令だ。ストラ」
「……はい」
どうやら決まったようだ。
俺、スコル、ハヴァマール、エドゥ、ストレルカ、ストラの六人でドヴォルザーク帝国へ向かう――。
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