ダンジョンを作りに行こう

 全員をお城の庭に集合させた。


「みんな、今からダンジョンを作る。これで無人島のレベルも1000を超えるはずだ」


 そう説明すると、ルドミラが恐る恐る手を挙げた。


「そのダンジョンは、例の洞窟を再開発されるのですか?」

「その通り。ここから歩いて少し距離があるけど、あそこが最適だ。今後、多くの冒険者を迎える未来を考えた場合、ダンジョンがあれば賑やかになるだろうしな」


「分かりました。では、私が護衛を」


 真剣な眼差しを向けられ、俺はドキっとした。そういえば、ルドミラと共に行動って、あんまりない気がする。

 いつもスコルかハヴァマールをつけているし、ちょっと不公平かな。


「分かった。今日はルドミラだけで十分だ。他のみんなは城を守ってくれ。地下牢には危険な男達もいるし、アルフレッドがいつ目を覚ますか分からない」


 そう、城には問題が山積していた。

 地下には六人の敵が捕らえられている。

 頑丈な牢とはいえ……脱獄される可能性もある。そうなったら大変なことになってしまう。見張りは必要だ。


 それに、アルフレッド。

 記憶がないようだし、意識を失う前は暴走状態。もしまた目を覚まして暴れたら手が付けられないかも。


「わたくしにお任せください、ラスティ様」

「ストレルカ、いいのか」

「はい。わたくしのアクアナイト三十体、大精霊オケアノスの守護は完璧です。安心して行って下さいませ」


「ありがとう。頼んだぞ」

「は、はい……絶対にお城をお守りいたします」


 顔を赤くするストレルカは、自信に満ちていた。そうだな、ストレルカの召喚術を信じよう。


「じゃ、俺とルドミラは出掛けるよ。あとは任せた!」



 * * *



 スコルやハヴァマール……寂しそうな表情だったな。そうは言っても、先を進めないといけない。


 今は『洞窟』へ向かい、ダンジョンを完成させる方が最優先だ。

 俺の隣にはドヴォルザーク帝国の元騎士団長にして勇者ルドミラ。ビキニアーマーで肌の露出が多い。


 正直、目のやり場に困る……。


 彼女は、ただでさえ大人びて綺麗だから。

 だから妙に緊張してしまうんだよな。


「……ラスティくん」

「な、なんだ」

「私の胸がそんなに気になりますか?」


「んなッ!!」


「その反応は肯定と受け取りますが」



 ニヤニヤとした表情を向けられ、俺は余計に顔が熱くなった。ルドミラのヤツ、俺をからかっているな……!?


 確かに、ルドミラの胸は大きい。

 激しい動きがあると胸がばるんばるん弾むし、男なら嫌でも注目しちゃう。って、だめだ! 考えるな俺。惑わされるな俺!!



「そ、そんなことよりもモンスターだ! ほら、目の前に『スライムオーク』が現れたぞ……って、スライムオーク!?」


「あんなモンスター、いたでしょうか。とにかく、ここは私にお任せを」



 俺より先に飛び出すルドミラ。

 だがまて。


 人間サイズほどのスライムの上に巨漢オークが騎乗しているぞ。


 この島にずっといるけど、あんなモンスターとは初めて遭遇した。まさか『洞窟ダンジョン』から出てきたのか?


 いや、あんなモンスターは存在しなかったはずだ。

 それとも存在するようになったのか。


 ルドミラは魔力で武器を生成していた。

 いつも使っている“桃色の剣”とは違うな。あれは確か『神器プロメテウス』だったか。今日は“黄金の槌ハンマー”を手にしていた。


 なんだありゃ。

 かなりスマートなハンマーだな。

 俺のゲイルチュールつるはしと形状が少し似ている。


 てか、ルドミラは複数の武器を扱えるのか。

 俺の部下となった今なら、あの槍の正体が分かる。



 [+10覚醒アマデウス]

 [物理攻撃力:10000]

 [魔法攻撃力:10000]

 [効果]

  究極の魔法槌マレット

  魔力を大量消費することで物理・魔法攻撃力を2~10倍まで底上げする(ランダム)。また、ダメージを与えたとき状態異常を強制的に与える。

  オートスキル『パニッシュメント』Lv.10発動。

  装備者の体力自然回復力、魔力自然回復力を100%アップする。

  この剣は破壊されない。



 こんなに強い武器だったのか!

 これなら余裕でオークスライムを撃破できるな。


 一瞬で距離を詰めるルドミラは、オークスライムと武器を交えた。ガンッと鈍い音が響く。


 ま……まて。


 あのオーク、ルドミラの武器を受け止めたぞ!?


 しかもそれだけではない。

 スライムが口から“赤い液体”を吐いた。


 それはルドミラの胸のあたりに掛かってしまい――え、ビキニアーマーだけが溶けた! 防具破壊の効果なのか?



「ちょ、えっ……!」

「ル、ルドミラ……」


「ラ、ラスティくん、どこを見ているんですか!!」


「ギリギリ見えなかったぞ!! たぶん!」

「た、多分!? もうこうなったら責任取ってくださいね!!」



 腕で必死に胸を隠しているけど、あれでは戦闘にならない。俺が出よう。

 ゲイルチュールを取り出し、俺は駆けていく。

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