世界でひとりしか使えない大魔法

 暴れ出すアルフレッドは、俺の方へ突っ込んできた。


「……ま、待て! なんで生きているんだ!」

「なんのことだ。私はなんだ、なんでここにいる!」


 アルフレッドは、明らかに取り乱して混乱している様子。記憶がないのか。

 そもそも、なんで生き返ったんだ。



「やめろ、アルフレッド! 俺たちが戦う必要はない」



 ゲイルチュールで防御するが、アルフレッドの拳が俺の武器を弾く。なんて威力だ!



「ど、どうして……アルフレッドさんが」



 背後でスコルがそうつぶやく。

 信じられないという表情のまま立ち尽くしていた。


 スコル……はっ、待てよ。


 さっきの白い光。

 エドゥは『聖なる光』と言っていた。



「エドゥ、スコルの放った光に覚えがあるのか!?」

「はい、ラスティ様。さきほどのスコル様が使ったスキルは『リザレクション』でしょう。世界でただ一人しか使用できない――“死者蘇生”の奇跡の力です」


「んなっ……」



 死者蘇生するスキルだって……?

 そもそも、不老不死の神器だってあるんだ。そんなスキルがあっても、おかしくはないか。でも、なぜスコルが……。


 いや、彼女はエルフにして『聖女』だから。守護聖人聖ヴァーツラフ・ズロニツェ――“ラザロ”の娘らしいし……辻褄は合うわけか。


 だけど、記憶までは戻らなかったのか。



「ラスティさん、わたし……わたしは……」

「今は考えるな、スコル。俺がアルフレッドを止める」

「……はい」



 エドゥに、スコルを守るよう指示。

 俺はゲイルチュールで反撃を開始した。


 穂先に風属性魔法をまとわせる。

 ビリビリと稲妻が帯電していく。


 電気ショックを与えて元に戻してやる――!


 強烈なヤツでな!!



「くらえ、アルフレッド!!」

「そんなものおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ……!!」



 まるでバケモノみたいに目を赤くして突進してくるアルフレッド。だめだ、正気じゃない。なら、主として俺が責任を持ってアルフレッドを治療する。


 一定の距離を保ち、魔力を増大させていく。


 それでもアルフレッドは俺を襲おうと必死に接近を試みてくる。まるで理性を失った獣のようだった。




「これで思い出せ、サンダーブレイク!!!」




 雷鳴を響かせながら、無数の雷が地面を駆け抜けていく。瞬間で到達する風属性魔法は、アルフレッドの全身をビリビリにした。



「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ……!!」



 死なない程度の威力を抑えた。


 ビリビリとバリバリと雷霆らいていが激しく唸る。


 やがて、アルフレッドは地面へ倒れた。



「ふぅ……これで元に戻っているといいけど」

「ラスティ様、お城へ戻りましょう」


「分かった、テレポートを頼む」

「うけたまわりです」


 指を鳴らすエドゥ。

 その瞬間には場面が切り替わった。



 * * *



 城へ戻り、全員を招集した。


「な、なぜアルフレッドが……」


 ハヴァマールは信じられないと困惑していた。いや、彼女だけではないストレルカやルドミラ、テオドールですら驚いていた。


 俺のベッドの上に眠るアルフレッドは、安らかだった。


 また死んでしまったのか。

 いや、息はある。



「みんな、さきほどアルフレッドが蘇った」


「「「「よ、蘇った!?」」」」



 事情を知らない待機組が叫ぶ。

 当然の反応だよな。

 俺だって信じられないし。



「恐らくはスコルの力だ。記憶がなくて俺を襲ってきたけど、電撃を浴びせた。今はそれで寝込んでいる状態だ」


「ラスティくん、スコル様はどんな力を使ったのです?」


「エドゥによれば『リザレクション』ではないかということだ」


「な! あの世界でただひとりしか使えないという死者を蘇らせる大魔法ではないですか。ラザロ様の研究のひとつだった……完成していたのですね」



 やっぱり、そうなのか。

 これは調べる必要があるかもしれないな。けど、今はアルフレッドが目を覚ますのを待つ。



「みんな、アルフレッドが目を覚ましたら直ぐに教えてくれ。俺はそれまでダンジョンを作らないといけない。もう時間もないからな」



 そう、立ち止まってはいられない。

 国の完成も目前なのだから。

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