デビルクラーケン襲来

 船は『ラルゴ島』を目指していく。

 新たな仲間トレニアさんを迎えて。



「トレニアさんの役職は、そのまま“ギルドの受付嬢”としよう。その方がイメージにぴったりだ」

「まあ、嬉しいです! ラスティ様のお優しいご配慮に感謝します」



 上品に笑うトレニアさんの笑顔に、俺は顔が逆上のぼせた。

 こ、これは……可愛すぎる。



「ちょっ、ラスティさん、鼻の下伸ばし過ぎです!」



 デレデレしているとスコルから怒られる。いてくれたのか。うん、この表情は間違いないな。頬をぷくっとさせているし。



「ごめんごめん。でも、トレニアさんが仲間になってくれるとはな」

「私も最後まで悩んでいました。ですが、ラスティ様についていきたいと思ってしまったんです。なんだか心がソワソワしちゃったんです」


「え、心がソワソワ?」


「はい、なぜかソワソワして……ドキドキもするんです。ラスティ様を見ていると、胸が痛んで辛いんです。なぜでしょう……?」



 そのトレニアさんの症状に、スコルとストレルカが顔を合わせて『ヤバイ』みたいな表情を浮かべていた。


 どうしたんだか。



「んー、それは大変な病気かもしれないな。島にいるルドミラかエドゥあたりに診てもらうか」


「はい、ありがとうございます。ラスティ様は、やっぱりお優しいです」



 手を握られ、俺は一瞬で顔が真っ赤になった。わぁ、トレニアさんの手……折れちゃいそうなほど細い。


 動揺していると、スコルとストレルカが俺をやや強引に引っ張る。――って、どこへ連れていくつもりだ!?



「ラスティさん!!」

「ラスティ様!!」


「ど、どうしたの二人とも。顔が怖いよ?」



 スコルは、ぷくぅっと膨れているし、ストレルカは唇を噛んで悔しそうにしている。どうなっているんだ。



「ラスティさん、わたしにはあんな顔してくれないですよね……」

「え、そんなことないよ。スコルには、いつも感謝してるし」

「そういうことではありません。だって、だって……さっきの表情はまるで……恋しているような」


こい? ああ、でも鯉モンスターは、巨大で骨が多くて……泥臭いんだ」


「……ラスティさんのバカあああああああ!!」



 スコルは叫んで船内へ戻っていく。

 何事……だ?

 俺、なんか言ったかな。



「そ、それより、どういうことですか、ラスティ様」

「どういうことって?」

「そ、そのぉ……わたくしだってラスティ様をお慕いしておりますのに」


 語尾が弱々しすぎて聞こえなかった。

 えっと、なんだろう?


 いや、とにかくスコルを追い駆けたい。


「ストレルカ、俺は君を頼りにしているよ。この船がなかったら何も出来ないし」

「えっ、それってつまり、わたくしは必要とされているってことですよね?」


「当然だ。君が必要だ」


「……う、嬉しいっ。泣いてしまいそうなほどに。――ああ、ラスティ様、誤解をして申し訳ありませんでした。スコルさんを追い駆けてあげてください」


「うん、そうする」



 * * *



 船内へ入り、俺とスコルの部屋へ入る。

 中にはやっぱりスコルがいた。


 ベッドで丸くなっていた。



「スコル、その……悪かった」

「トレニアさんみたいな清楚せいそな人がいいんですね」


すねねるなって。ほら、スコル」



 こうなったら頭をでる作戦だ。

 サラサラすぎる金髪に触れる。

 けど、それでもスコルは背を向けたまま。


 ……ん?

 でも、なんだか体を揺らしている。

 背中からは『嬉しい』と語っているようだった。ふむふむ、このまま撫で続けてみるか。



「ごめんなさい、ラスティさん。わたし……」

「いいんだ。俺の方こそスコルに構ってやれなくてごめんな」

「そ、そうですよ……もっとわたしに構ってください」



 ようやくこちらを向くスコル。頬を紅潮させ、やや涙目。そうか、寂しい思いを――『ドォォォォォォン!!』――と、いきなり船体が激しく揺れた。



「なにごと!?」

「そ、そんなぁ……こんな大事な時に」


「スコル、ここは危険だ。上へいくぞ」

「は、はい……」



 部屋を出て甲板へ向かう。

 ストレルカが大精霊『オケアノス』を召喚して大津波を止めていた。……な、なんだ。


「来られましたか、ラスティ様、スコルさん!」

「なにがあった!」


「ボスモンスターの『デビルクラーケン』です!」

「なんだって!?」



 [デビルクラーケン]

 [属性:水]

 [種族:動物]

 [詳細]

  海に潜む巨大な悪魔。

  遭遇すれば船は一瞬にして沈むと呼ばれている。触手は高い攻撃力を持ち、クリティカル率が高い。弱点は不明。



 船の前に現れる巨大なイカ。

 な、なんて大きさだよ。

 山のように大きくて、触手を何本もうねらせている。



 大きな触手が伸びてきて、船体を破壊しようとする。まずい!! 俺がなんとかするしかないな。



 戦闘態勢に入ったその時だった。



 ドンッと激しい音がして、敵の触手を弾いた。……え? って、あれは……あの空高く飛び跳ねている乙女はトレニアさん!?


 嘘でしょ……!




***おねがい***

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