最強の門番

 部屋へ戻り、ストレルカにも説明した。ドヴォルザーク帝国に不穏な動きがあること。レオポルド騎士団のことを。


 全てを説明し終えると、ストレルカは理解を示した。


「そうだったんですね。今の騎士団長がアルフレッドさんの名を名乗っているのですね。いったい何者なのでしょう。本人なわけないでしょうし」


「明日、それを確認する為にレオポルド騎士団へ乗り込もうと思う」

「分かりました。わたくしも同行します」



 話がまとまったところで今日は寝ることにした。部屋にはベッドが二つある。広く快適に寝れるふかふか高級ベッドだ。

 少し前から眠気に襲われているし、横になったら一瞬で眠ってしまいそうだな。


「ふたりとも使うといい。俺はソファで寝る」



「えっ、ラスティさんも一緒に寝ましょう」

「そうですよ。スコルさんの言う通りです! ラスティ様もベッドをお使い下さい」


「けど、うーん……」



 困っているとスコルがとんでもない提案をした。



「ラスティさん、三人で寝ればいいんですよぉ~」



 その手があったか――って、マジか!! それはつまり、スコルとストレルカに挟まれて寝るってことか? いや、挟まれる必要はないかもだが、そんな光景が目に浮かぶようだった。


「スコルさん、それです! ラスティ様を離さないように腕を組むんですよ」

「おぉ! ストレルカさん、それでいきましょう」


 二人は俺の方へ近づくなり、腕を絡めてくる。右も左も捕らえられ、俺は身動きできなくなった。そのままベッドまで強制連行、結局挟まれて眠る羽目になった。


 なんだこの状況。

 どうしてこうなった!?


 二人が俺を見つめてくる。


 どっちを見ればいいんだよ、これ。


 スコルは、エメラルドグリーンの瞳で見つめてきて――息を吹きかけてくる。俺は、ぞくっときて眠気が吹っ飛んだ。そしてストレルカは、俺の胸元あたりを擦ってきた。


 こ、これは……!


 ――って、こんなんで寝れるかッ!


 嬉しいけど寝れる予感がしない。

 このままだと寝不足コース必至だ。



「ふ、二人とも……近いって。もう少し離れてくれないか」



 だが、二人ともそのままだった。

 ……くそう、だめか。


 仕方ない、このまままぶたを閉じて……寝よう。スコルとストレルカの体温が温かくて、ポカポカしていた。……あれ、意外と寝れそうだぞ。


 最初は、ドキドキして心臓が破裂しそうだったけれど、今は落ち着いてすらいた。なんか居心地いいっていうか、スコルは包み込むような安心感あるし、ストレルカは優しさがあった。


 そうか、これがぬくもり・・・・か。



 * * *



 早朝、ホテルをチェックアウトして外へ出た。

 最高のホテルだったな。もう少し満喫したかったけど、今は騎士団が優先だ。レオポルド騎士団。


 アルフレッドを名乗る騎士団長の正体を暴く。偽物なら正義の鉄槌を下す。でも、本物ならどうする?


 俺は……。

 俺は……。


 いや、そんなはずはないんだ。

 本物のアルフレッドは、俺の島で安らかに眠っている――はずなんだ。くそう、島へ戻れれば確認できるだけどな。


 こんな時、エドゥからテレパシーがあるといいんだが、その兆候はなかった。こちらからも連絡できればな。


「スコル、ストレルカ。レオポルド騎士団は西の方角だ。歩いて向かうぞ」


「分かりました。ついていきますね!」


 スコルは元気な返事をくれた。

 だが、ストレルカは沈黙していた。

 おや?



「…………」

「どうした、ストレルカ」


「い、いえ。その少々嫌な予感がして……朝も部屋の花瓶が割れましたし、靴紐も千切れるし……変な声が聞こえたりで怖いんです」



 ホテルでそんな事があったのか。不吉だな。けど、それでも向かわねばならない。ホテルを立ち去り、俺たちは騎士団を目指した。



 * * *



 ドヴォルザーク帝国の西地区。

 レオポルド騎士団が近づくにつれ、聖騎士の姿も多くなった。俺を知る騎士もいるようで、ギョッとしていた。いかんな、かつての知り合いもいるかもしれない。


 その予想は当たった。


 騎士団の前につくと門番が駆け寄ってきて、俺を睨んだ。やっべ、いきなり捕まった。


「そこのあなた様! その顔に覚えがある! あなた様はまさか……!!」

「よう、久しぶりだな……シベリウス」


 シベリウス、その名は偽名。

 本当の名は『ブルース』という。


 レオポルド騎士団の最強の門番・・・・・にして、あのアルフレッドの息子だ。つまり、ブルース・スナイダーということになる。


 偽名なのは、理由を教えてくれなかったけど今なら分かる気がした。そうか、まだ門番をやっていたんだな。ちょうどいい、騎士団長のことを聞き出す。

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