勇者ルドミラの誓い
畑仕事を切り上げ、城へ戻った。
まだ名もなき城だけど、島のど真ん中に建っていた。周囲には湖や農地が広がる。以前よりもパワーアップしていた。
「ふぅ、今日も働いた」
「お疲れ様です、ラスティさん」
「ああ、スコルもお疲れ。俺はルドミラに話があるから、スコルは先に大浴場へ行くといい
「そうなのですね? 分かりました。後ほど」
スコルと別れ、ルドミラの部屋へ向かった。
彼女の部屋は二階の隅。
歩いて向かい、扉の前でノックをした。
しばらくして扉が開いた。
「ようこそ、ラスティくん!」
そこには笑顔で出迎えてくれる勇者ことルドミラがいた。
桃色の髪をシニヨンにまとめて可愛らしいというか、美しい。
「ルドミラっていつもビキニアーマーだな」
「ええ。昔は普通の装備だったんですけど、これが身軽で慣れているので」
にしたって、肌を出し過ぎだ。
俺は目のやり場に困っていた。
どこを見ればいいんだ……?
顔を見ても美形すぎて視線を合わせ辛い。かといって、胸は……ダメ。へそもエロすぎる。フトモモも大胆すぎる。全部ダメだっ!
「……まったく」
「は、はい?」
「いや、なんでもないよ。それより、俺は明日、ドヴォルザーク帝国の様子を見に行こうと思う」
「ドヴォルザーク帝国へ?」
島の人口を増やしたいとルドミラに説明すると、彼女は真面目な顔をして納得してくれた。
もともとレオポルト騎士団の騎士団長を務めていたんだ。帝国の話には敏感だと思ったけど、そうでもなかった。
「俺とスコル、エドゥで行く予定だ」
「三人で? ちょっと心配ですね」
「大丈夫だ。俺がついているし。だから島を守る者が必要だ」
そこでルドミラだ。
勇者であり、元騎士団長の力は信用に値する。あの魔王との戦いでも活躍してくれて、俺を補助してくれた。今や頼もしい仲間でもあった。
「仕方ないですね。でも、無茶は禁物ですよ」
「ありがとう、ルドミラ。君は理解が早くていい」
「……っ! ラ、ラスティくん。そ、それは褒めているんですよね?」
なんだか動揺するルドミラ。
顔が赤いな。
「そうだけど。というか、尊敬してる。ルドミラって伝説の人物の割に親しみやすいし、真面目だし、ちゃんと状況報告もしてくれるし有能すぎて、帝国に申し訳ないくらいだよ」
「……はぅ」
ぷしゅーーーと、スコルみたいに顔から煙を出すルドミラさん。ちょっと、なんかヤバそうだぞ!!
ていうか、ルドミラがこんなに照れているのは初めてみた。
ちょっと新鮮だな。
「大丈夫か?」
「だ、だ、だいじょうぶでしゅ!!」
「でしゅ!?」
噛んだのか。
今の噛んだのか!?
ああ、もう顔が真っ赤っかじゃないか。
おでこでバーベキューができそうなほど熱を帯びていた。じゅうじゅう音が出てるぞ。
「じゃ、じゃあ……俺は風呂に行く」
「ラ、ラスティくん!」
「は、はい?」
「ラスティくんだって凄いです。元第三皇子なのに、こんなたくましく生きて……島を開拓し、ここまで家や農地を広めていくだなんて普通の人間にはできないことです」
「そうかな」
「そうですよ。長いことを世界を見てきましたけど、こんな素晴らしい島を作った人間は初めて見ました。いずれ、この島が国になる日も近いのですね」
「歴史的瞬間を見せてやるよ。だから、俺についてきて欲しい」
「はい、この“聖剣”に誓い――ルドミラは貴方を補佐いたします」
改めて固い握手を交わした。
ルドミラの力も必要だ。
まだ世界情勢は不安定。
ドヴォルザーク帝国が沈黙している中で不気味に動き始める国々。特に滅んだ『連合国ニールセン』から独立を果たした国が不穏だった。
そんな世界だからこそ、俺は危機感を忘れずにいた。
人員を増やし、防衛力も高めていかねばと。
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