エルフの国を脱出しろ!!

 俺は、さっき大神官アルミダからボロディンを出て行くよう忠告ちゅうこくを受けたとテオドールに話す。


「スコルをかばう市民の手によって上級騎士のクロードがボコボコにやられたんだけど、それを俺がやったと勘違いしているようだ」


「なるほど、それで追い出される羽目はめになったと……無茶苦茶むちゃくちゃですね」



 テオドールはうなずき、分かってくれた。良かった、彼は味方だ。



「このままボロディンに留まると襲われかねない。今すぐに出ていこうと思う」

「賢明ですね。居続ければ不法滞在となり、捕まるでしょう。ボロディンは、その辺りかなり五月蠅うるさいので、下手すると監獄行きです」


「厳しいな」


「ええ。本来、エルフは他種族をよしとしません。なので、長きに渡り帝国と敵対関係にあったのです。ですが、近年はルドミラの活躍により、態度を軟化させていたようです。彼女がいれば安泰あんたいでしたからね」



 ルドミラか。

 そういえば、島に来ると言っていた。本人から聞けば何か分かるかもしれない。



「とにかく、ボロディンを出た方が良さそうだな」

「ええ、脱出をおススメしますよ」


「テオドール、一緒に来てくれるか?」


「急な話ですからね……準備も何もしていない状態。大変厳しい状況ですが――分かりました。私としてもアルミダの異常行動が気掛かりです。それに、ルドミラとエドゥに会いたい気持ちもありますから、同行しましょう」



 最初こそ険しい表情だったが、テオドールはそう笑った。良かった! これで彼を島に連れていける。いろんな知識も持っているようだし、農業も何とかなるだろう。



「となれば、ストレルカ。船を頼む」

「こんな事もあろうかと、いつでも出航できるよう、オケアノスに指示してありますから」



 さすが召喚士サモナー

 ストレルカが有能で助かるな。



「ハヴァマールも構わないな?」

「ああ、余と兄上は兄妹だからな。今もこれからも変わらない」


「ありがとう。後は……スコル」



 視線を向けると、スコルは少し辛そうな顔を浮かべていた。そうだろうな、祖国を裏切るようなものだ。キツイ決断を下さねばならないだろう。



「……わたしは、ラスティさんについて行くって決めたんです。ラスティさんの隣にいたいんです」


「スコル……。俺も同じ気持ちだ。島へ帰ろう」

「はい。わたしの帰るべき場所は、あの島です」



 手を取り、俺はスコルを連れていく。けれど、背後から複数の気配が向かって来る。……あれは、エルフの剣士か!


 それにテオドールが反応する。


かんばしくない状況ですね、ラスティ様。大神官アルミダは、早くも我々を捕らえようとしているのかもしれません」

猶予ゆうよなしかよ……!」



 階段の方から降りてくる剣士たち。このままでは取り囲まれる。ならば、平和的な解決をするまでだ。そう、これはあくまで自衛の為・・・・。正当防衛だ。


 俺はこっそりと『木材』50個を使用。階段の下に『落とし穴(大)』を設置した。



 そうとは知らずにエルフの剣士――総勢十名は、落とし穴に見事に落ちる。



「うああああ!!」「な、なんだ!?」「地面が崩落した!」「うそぉぉぉお」「ぎゃあああ!」「ぬわぁぁ」「げええッ」「ふ、深すぎだろ!」「なぜえ!?」「そんなぁ……!」



「おぉ、さすが兄上。周囲に悟られないよう『防衛スキル』を使ったのだな」

「ハヴァマールには気づかれたか。あれなら、自然に地面が抜け落ちたとしか思えないからな。たいしたケガもないだろうし」


「うむ。今の内に逃げるのだ!」



 俺たちは港へ向かった。

 ストレルカの船は――あっ!


 あんな所にもエルフの剣士たちが……仕方ない。排除するしか……むぅ?

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