エルフの国って?
エルフの国『ボロディン』は、東のオラトリオ大陸にある大国らしい。俺の島よりも遥に広く、人口一億人とも呼ばれている規模のようだ。
「へぇ、エルフの国ってそんなに広大だったんだな」
「そうなんです。帝国に負けないくらい広いんですから。しかも、極東に位置するので、帝国から攻めにくい場所なんです。戦争とも無縁なんですよ~」
そういえば、そうだった。
エルフの国が戦争に巻き込まれているとか聞いた事がない。そもそも、エルフという種族は温厚で友好的だと聞く。まさにスコルがゆるゆるの可愛いエルフだ。
「そうかぁ、大きな島国なんだね。あれから十年も経っているし、色々変わってそうだな」
「ええ、いっぱい案内します! 宮殿にも寄って下さいね」
宮殿といえば『ユーモレスク宮殿』だ。あそこは子供の頃に一度、行ったきりだな。思えば、あの宮殿でスコルと出会ったわけで――。
思い出していると、部屋の扉をノックする音が響いた。
「お邪魔するよ、兄上」
「ハヴァマール、部屋はどうだった?」
「うん。この船内は素晴らしいな。なんというか貴族らしい豪華な造り。余は気に入った!」
「そうだな。快適すぎて定住したいくらいだけど、俺達の家はあの島だ」
「もちろん。島を住みやすくする為にも、エルフの国の技術を学ぶが得策。余も手伝う」
「ああ、頼む」
それから、ストレルカがやって来た。微妙な顔で。
「あ、あの~」
「ん? どうした、ストレルカ」
「実はですね、非常に複雑なんですが、スコルさんを貸して頂きたいのです」
「え? スコルを?」
あのストレルカがスコルを頼るとはな。俺は、スコルを呼ぶ。
「……な、なんでしょうか」
スコルも少しぎこちない。相変わらず、微妙に敵対関係だな。そろそろ仲良くして欲しい。でも、今回はストレルカがスコルを貸して欲しいと言った。これはチャンスか。
「スコルさん、その……わたくし、重大な事に気づいたんです」
「じゅ、重大な事?」
「……はい。それは、ラスティ様の好みの味が分からないんです!」
「え……」
「いざ料理を始めようとしたら、ラスティ様の好みの味付けが浮かばなくて……それで、その、スコルさんなら、お詳しいかと」
「もちろん知っています。だって、わたしがいつも料理していますから!」
えっへんと、スコルは大きな胸を張る。そうだな、いつもスコルに料理して貰っている。おかげで美味しいご飯が食べられていた。
って、その為にスコルを?
それは意外すぎるな。
「悔しいですけど、ラスティ様を満足させるには、スコルさんに頭を下げる他ありません。どうかご教授願いたいのです」
「分かりました。わたしも料理人ですから、手伝いますよ」
「おぉ、スコルさん。感謝いたします」
丁寧に頭を下げるストレルカ。
険悪かと思ったけど、そうでもなかった。料理が二人の関係を修復(?)した。これで少しは仲良くしてくれるといいんだけど。
二人は俺の部屋を後にし、料理へ向かった。
「良かったな、兄上」
「な、なにがだよ」
「二人とも兄上を幸せにしたいとさ」
「……そ、そうなのか」
そう聞くと妙に照れ臭い。
頬を掻いていると、ハヴァマールが提案した。
「この分だと、まだ掛かりそうだ。兄上、少しだけでいい、夜のグラズノフ共和国を見て回らんか?」
「グラズノフ共和国を? その考えはなかったな。うん、せっかく寄港したんだ。少しくらい観光してもバチは当たらない。じゃあ、行くか」
「おぉ、ノリがいいな兄上」
「たまにはいいだろ。もちろん、スコルとストレルカに一言は言っていくけど」
「うんうん。兄上とお出掛け! 楽しみだっ」
ここまで期待されるとは。そうだな、たまにはいいだろ。
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