聖魔大戦の真相

 ふと気づくと外が暗くなっていた。

 もう夜か、そろそろ明かりをつけないと。

 ストレルカから提供されたロウソクに火を灯す。


「この前だけど、今日もたくさんの支援物資をありがとう、ストレルカ」

「と、当然ですわ。ラスティ様の為なら、なんだってしますから」

「それは助かるよ。今後もよろしく頼む」


 握手を求めると、ストレルカは顔を赤くしていた。なんだかガチガチになって手を伸ばしてきた。ど、どうしたんだ?


「よ、よろしく……です」

「なんだ、熱でもあるのか?」


 ストレルカのおでこを手で押さえると、ボンッと爆発した。……うわ、びっくりした。


「ちょぉぉぉ……! 嬉しいですけれど、その、わたくし、まだ心の準備があぁぁ……」

「え、ちょっと!?」



 恥ずかしがって家を出て行ってしまった。立ち尽くしていると、ハヴァマールに突かれる。



「罪な男だな、兄上。スコルが温泉中で良かった。この場を見られていたら、修羅場と化していただろうに」

「なんの話だよ?」


「……本気で言っているのか。兄上の鈍感には頭を痛める」

「??」



 さっぱり分からん。

 俺はただ、親密な関係を目指そうと努力したのだが……むぅ。逆効果だったか?



「だめだこりゃ……」

「それより、ハヴァマールよ。お前はあのエドゥアルドに思う所はないのか」



 そう、ハヴァマールは世間では『魔王』なのだ。その昔の魔王は、勇者ルドミラと激しい戦いを繰り広げた。それが『聖魔大戦』なのだ。で、勇者には仲間がいた。大賢者エドゥアルドともう一人ほどいるらしいが正体不明。


 その伝説が、なぜかそのままの姿で生きていた。しかも、ドヴォルザーク帝国の副団長をやっていた。もう意味が分からない。



「大賢者エドゥアルドか。まさか存命だったとは」

「それだよ。なんで生きている」

「恐らくは“不老不死”のアイテムか何かだろう。我が一族もそのようなアイテムを求めていた時代があったらしい。まあ、魔王と呼ばれてしまうくらいだ、野心が強かった」



 不老不死か。老いもしなければ、死にもしない。まさに最強。でも、そんなアイテムが存在するのか。



「アイテムに心当たりはないのか」

「なんだ、兄上は不老不死になりたいのか?」

「そうではない。シンプルに気になるんだ。そんなものがあるのかとな」

「あるかないかで言えば“ある”な」


「マジかよ。実在するんだな」


 ちょっと嬉しくなって、ハヴァマールの肩に手を置いた。びくっとハヴァマールは反応して、困った顔をして銀の髪を弄っていた。なんか落ち着かなさそう。


「……わ、分かった。兄上には正直に言おう。その不老不死のアイテムを巡った戦争こそ『聖魔大戦』なのだ」


「へ……?」


「アイテムの名は『エインヘリャル』という。まあ、アイテムというより“魂”なのだがな。だが、アイテムにカテゴライズされているので――」


「いや、もう意味が分からん。てか、さっきは知らないような口ぶりだったじゃないか。本当は知っていたのか」

「す、すまぬ。兄上には、島開発を優先にして欲しいし、余計な心配事は不安を生むだけと思ってな……悪気はなかったのだ」



 そこまで配慮してくれていたとはな。でも、嬉しい。少しでも聖魔大戦の事を話してくれて。そうだな、少しずつ知ればいいさ。



「話してくれてありがとう。という事は、あの大賢者エドゥアルドは『エインヘリャル』を手に入れているという事になるのか……?」

「もしくは、彼女自身の力か。エドゥアルドは、大賢者だからな」



 今のところ推測の域を出ないな。

 俺は話しをここまでにして、飯の準備を進めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る