形勢逆転の勝利
「第一皇子・ワーグナー様の負けです。ですので、これ以上の攻撃はお止め下さい、ラスティ様」
「あんた……女だったのか」
その素顔は恐ろしいほど整っており、人形のようだった。とんでもない美少女だった。黄緑色の髪が風に揺れ、同じ色の瞳を俺に向けていた。俺は、騎士団長も副団長も一度も会った事がなかった。帝国は、日常のように戦争をしていたからレオポルト騎士団はあっちこっち遠征していた。だから会う機会がなかった。
でも、おかしい。
こんなスコルよりも年下っぽい少女が……副団長?
「はじめまして、ラスティ様。会うのはこれが初めてですね。自分の名は『エドゥアルド』と申します」
「あ、ああ……。悪いけどこの島から撤退してくれ」
「ええ。ですが、ワーグナー様を治療してからです」
淡々とした口調で副団長は、情けなく倒れているワーグナーに手を向けた。
「何をする気だ」
「言ったでしょう、治療すると。彼は全身が骨折して非常に危険な状態です。最高位の回復魔法――グロリアスヒールで全回復しましょう」
ぽわっとワーグナーの全身が光ると、裂傷が一瞬で回復。次第に意識も取り戻し、頭を押さえながら立ち上がった。
「……くっ、ここは。そうだ! ラスティ、貴様あああああ――ぐはああああああああああ!?」
襲い掛かってこようとするが、ワーグナーは副団長エドゥアルドの魔法(?)で一撃で沈められていた。かなりの衝撃で押さえつけられていた。重力系の魔法か?
「ワーグナー様は敗北をしたのです。やはり、貴方は自分には相応しくなかった。婚約は破棄させて戴きますよ」
「――――なッ!! まて、エドゥアルド!!」
副団長に掴みかかろうとしたワーグナーだったが、副団長の魔法が拘束。光の縄でグルグル巻きにされていた。最強と自信満々に言っていたくせに、副団長にはまるで歯が立たない。てか、この子……エドゥアルドの魔法が強すぎるんだ。
「さきほどの押さえつけも拘束も全て『ソウルテレキネシス』という異能です」
なんか知らんが能力を見せて貰えた。
[ソウルテレキネシス][Lv.10]
[アクティブスキル]
[有効レンジ:大]
[効果]
①対象を押さえつる。
②呪縛で行動不能にする。
③闇属性攻撃 +35%。
④状態異常【暗闇】を高確率で与える。
⑤一定時間、全スキルの固定詠唱時間を半減させる。この効果は一度切り。再使用時間は五分。
なんだこりゃ……無茶苦茶だ。
こんなのまるで偉大な魔法使いか賢者か――あッ!
「副団長、君、まさか……」
「ようやく気付かれたようですね、ラスティ様。そうです。自分は大賢者のエドゥアルド。事情があり、帝国の副団長をしていますが、今後は島にお邪魔しようかと思いますよ」
「はい!?」
「とりあえず、この無能な第一皇子を国へ返さねば大事。
――と、エドゥアルドは淡々と事を進めていく。何なんだ、この人! 見守っていると、彼女は掌をワーグナーに向けた。
「エドゥアルド!! この俺より……そこのアホでマヌケなラスティを取るというのか!! そいつは底なしの無能だぞ!!」
「そうは思えませんが。氷帝と名高い貴方を見事倒しましたし。自分は、強い人が好きなので」
「……ぐっ」
諦めたのか、ワーグナーは意気消沈。そのまま、テレポートで姿が消えた。――って、マジのテレポートか。このエドゥアルドという少女、本物の『大賢者』らしい。いやだが、おかしい。
聖魔伝説は、遥か昔の話。
当時の人物が生きているはずがない。……けど、同じ名の女の子がいるわけで……能力だって桁違いだ。この子は本物としか思えない。
帝国の副団長にして大賢者か。とんでもない人が島にやって来たな。正直、ワーグナーの登場より驚いた。さてはて、どうしたものか……?
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