大精霊・オケアノス

 残りは『鉄』集め。

 その為には洞窟へ向かい、鉄鉱石を掘る必要がある。まだ時間もあるし、出発だ。



「そろそろ行こうか」

「そうですね、畑は完成しましたし、ラズベリーも確保しましたからね。あー、あと木材も」


「時間的に、洞窟を少し回るくらいだな」

「了解です。支援はお任せ下さいね」



 畑からは少し距離があるけど、洞窟を目指した。

 雑談を交えて先へ進むと、例の洞窟が見えてきた。一応、ダンジョンらしいが、まだ奥までは進んでいない。この前は『エクスキューショナー』という明らかにヤバいモンスターが出現したけど、どうにか処理した。


 今日は頼むから、変なのは出てこないで欲しい。そう願っていたけれど、向こうは容赦なかった。



『キキィ……』



 怪しげな声が洞窟内から響く。

 あー…、やっぱりいるんだ。


 ハヴァマールいわく、洞窟の奥はダンジョンに繋がっている。稀にモンスターが地上に出てきてしまうらしい。その証拠に、気配があった。


 闇から現れる緑の怪物。

 あれは見た事がある。



「前にスコルを襲った『グリューンゴブリン』か……」

「ひぃ……! ラスティさん、怖いです」


 俺の背中に抱きついてくる、スコル。――って、ダメ~! 俺の背中にそんな柔らかい物体を押し付けないでくれええええ……!!!


「れ、冷静になってくれ、スコル! 俺が倒すから」

「で、でもぉ」


 トラウマになっているんだろうな。スコル、恐怖で顔が引きってるな。ここは俺が守らないと。



『キキィ……』『キキィ……』『キキィ……』『キキィ……』『キキィ……』



 ――ん!?


 なんか増えてね……?



 グリューンゴブリンの気配がどんどん増えていく。その数、ざっと二十はある。やべぇ、大量発生かよ。ハヴァマールが言っていたが、モンスターはたまに群れと成して襲ってくるらしい。これがそれだ。



 ならば、ゲイルチュールで……倒せるのか?



「スコル、支援魔法をくれ!」

「わ、分かりました。キリエとグローリアをどうぞ!」



 ふわっと青白い光が俺を包む。

 少量だがステータス補正がアップ。

 ないよりはマシだ。



 その瞬間、グリューンゴブリンが飛び出てきた。……くそっ、数が多いな。



「――――てやッ!!」



 ゲイルチュールを振るい、一気に三~四体を葬る。良かった、あれから俺は強くなった。今なら対抗できるのだが……げッ! また沸きやがった。キリがない。


 焦っていると、声がした。



「なにやら困っているようですね、ラスティ様。ここは、わたくしにお任せを。大精霊オケアノス、あのゴブリンを一掃しなさい――メイルシュトローム!!」



 ん、この声って……。

 明らかに聞き覚えのある少女の声だ。

 キョロキョロと周囲を見渡していると、空から水が降って来て――津波がグリューンゴブリンに激突。


 凄まじいダメージを与え、洗い流してしまった。



「こ、これは……水属性魔法! ストレルカか!」



 巨人の水男の肩に乗るストレルカの姿があった。な、なんだありゃあ……!?



「こんにちは、ラスティ様。それと……エルフ」



 俺は「や、やあ」と挨拶。一方のスコルは「……むぅ」と膨れていた。……また火花が散るなぁ。



「てか、大精霊って!」

「ええ、わたくしは大精霊オケアノスと契約をしているのです。詳細はこちら」



 ――と、呆気なく詳細を見せてくれた。



 [大精霊・オケアノス]

 [召喚]

 [効果]

  莫大な魔力を消費し“大精霊・オケアノス”を召喚する。水属性魔法『メイルシュトローム』を発動可能。相手が火属性を持つ場合、三倍のダメージを与える。

 オケアノスを召喚中、発動者の身を『ウォーターシールド』によって自動守護する。ウォーターシールドは、遠距離物理・魔法攻撃を防御する。



 再使用時間クールタイム:1時間



 ストレルカが、まさかの“精霊使い”とは……これは驚いた。ただの帝領伯令嬢ではなかったんだな。

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