スライム現る!!
全員で足並みをそろえて外出――というのは、これが初めてかもしれない。
西に停泊中の船を目指して砂浜を歩く。いつもは北の方ばかりへ向かっていたので、西はこれが初めてだ。
こっちは
「この島って、このような小高い丘もあるんですね」
「そうだな、スコル。距離もあるし」
アルフレッドが中々帰ってこないと思ったら、ここを歩いていたわけか。そりゃ時間が掛かるわけだ。しかも、モンスターも生息している。
あれは『スライム』か。
赤いスライムがあっちこっちに移動していた。
「あれは『ロートスライム』だ、兄上」
ハヴァマールがモンスターの名前と詳細を教えてくれた。
[ロートスライム]
[属性:水]
[種族:植物]
[詳細]
様々な場所に出現するスライム。最弱である為、初心冒険者向け。
「ちょ……なんだこれ、前はこんなの無かったろ」
「まあ、少し気が変わってな。兄上をサポートするのが余の役目だから」
どうやら『モンスター分析スキル』なんてものがハヴァマールにはあるらしい。いろいろ便利な能力を持っているヤツだな。助けるけど。
それにしても、家にあるクッションはあのスライムをモデルにしていたのか。納得。
「なるほどな。襲ってくるのか?」
「あれは、ノンアクティブモンスター。こちらから手を出さない限りは攻撃してこない。だから、ああして転がっている」
へぇ、モンスターにも色々いるんだな。今までは
「じゃあ、あのモンスターは無視していいわけだ」
「基本的に問題はない。だけど、極稀に“ボスモンスター”が発生する。ほら、あのイノシシの『グリンブルスティ』もそうだったろう。
ボスモンスターが出現した場合は、周囲のモンスターを“取り巻き”として操り、集団で攻撃してくるので注意が必要だ」
以前は、他にイノシシモンスターがいなかったけど、今回は状況が違うわけか。一応、注意しておいた方が良さそうだな。
注意深く砂丘を歩き、丘を登ったり下ったりした。
「……ふぅ、ようやく崖まで来たな」
「ラスティ様、あの小型商船です」
アルフレッドが指をさす。
あれか……!
立派な木造船が停泊していた。
何故か大砲がたくさん付いていて……って、これは『ガレオン船』じゃないか! どこが小型商船だ。連合国ニールセンの海軍か海賊かよッ。
「とんでもない船だな。あれにストレルカという少女がいるのか」
「そうです。ただいまお呼びいたしますので」
と、アルフレッドは軽快に
「こんな家のような船は初めて見ました」
「そうなのか、スコル。エルフの国には、船とかないの?」
「わたしは、あんまり港の方には行かなかったので……」
そういう事か。
スコルは聖女らしいし、あんまり外を歩き回るという習慣が無かったのかもしれない。俺と同じだな。
「もし、この船が手に入ったら……他の国へ行けるな」
「わぁ、ラスティさん、それってエルフの国へも帰れるって事ですよね!」
「スコルは、エルフの国ボロディンへ帰りたいのか?」
「そういう意味じゃないですよ! わたしの居場所はラスティさんの隣が良いんですっ」
あれ、スコル……ちょっと怒ってるかも。う~ん……俺、なんか余計な事を口にしてしまったかもしれない。
少し焦っているとハヴァマールが手を鳴らす。
「この船が入手できれば、兄上の言う通り様々な大陸へ行けるであろう。――となれば、食糧や家具、薬の入手も容易となる。更に言えば、人口を増やせる」
「人口を……」
「そうだ、兄上。これから帝国と戦いになれば人手が必要かもしれぬ。とあれば、傭兵を雇ったり、ギルドを迎え入れたりする必要性が出てくるかも」
船ひとつあるだけで選択肢がそんなに増えるとは……欲しいな、船。
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