パワーアップした聖女

 家を出て、青空の下で体を伸ばす。

 パワーアップしたゲイルチュールを手に取り、担ぐ。さぁて、気合を入れていきますかぁ~。


「あのぅ」

「どうした、スコル。トイレか?」

「ち、違いますよ! わたし、ちょっとレベルアップしたんです!」


「レベルアップぅ~?」


 ていうか、ヒトのレベルは無いんだがな。だから世界は『スキル』を重視する。つまり、スコルの言っているのはスキルの事らしい。


「ええ。ヒールが派生して、二つのスキルが発現したんです」


 スキルは使用し、ある程度鍛えられると新たなスキルを習得できる場合があるらしい。アルフレッドから聞いた。


「へぇ、どんなスキルなんだ?」

「教えて欲しいですかぁ~」



 俺に顔を近づけ、ニコニコ笑うスコル。近くで見ても整った顔だなぁ……もう、そんな近いと照れるってーの。



「ま、まあな……」

「分かりました。じゃあ、頭をでて下さい」


「……は? なんでだよ!」

「わたしの頭を撫でてくれないと教えません」



 マジかよ。なんて条件だ。しかし、気になるしなぁ……。くぅ! でもまあ、スコルの、エルフの金髪の触り心地も気になる。


 てか、女の子の髪は神聖なものだから、安易触れるんじゃありませんとアルフレッドから教わったけどな……。でも、スコルが“撫でろ”と要求してくるのだ。これは同意のもと。


「本当に良いんだな」

「はいっ」


 早くしろと言わんばかりに頭を突きだしてくる。こうして見ると凄いつやだ。枝毛なんてなく、完璧にサラサラ。こんな禁忌モンに触れていいのか。罰でも当たりそうだけどなぁ……。


 ええい、勢いでいく。


 恐る恐る俺は手伸ばす。


「いくぞ……」

「……どうぞ」


 もふっとスコルの頭に触れ、その触り心地に驚愕。なんて、もふもふしてやがるんだ。伝説の聖獣かよ。ていうか、聖獣なんて会った事ないけど! 噂によれば、とんでもない触り心地で、身を預けると天国のように安眠できるとか。


「どうだ、スコル」

「気持ちいです……。嬉しいなぁ、ラスティさんに撫でて貰えて」


 子供のように俺に身を預け、スコルは安心しきっていた。ここまで身を寄せてくれると、俺もなんだか嬉しい。


 スコルの満足するまで頭を撫でた。次第にスコルは、俺の方へ倒れてきて、押し倒してきた。……ちょ、えっ!


「ど、どうした!」

「…………なんだか、眠くなってしまいましたぁ」


「って、おい、寝るなー! スキルはどうした!」

「そうでした。ごめんなさい」


 倒れながらも、スキルの詳細を教えてくれた。



 [キリエ][Lv.1]

 [スキル]

 [効果]

  自身か対象に支援魔法を掛ける。

  全ステータスに +1% の補正を与える。更に、幸運LUKを上昇させる。レベル『1』上がる毎に補正が +1% 上昇する。スキルの最大レベルは『10』。



 [グローリア][Lv.1]

 [スキル]

 [効果]

  自身か対象の攻撃・移動速度を 1% アップする。レベル『1』上がる毎に補正が +1% 上昇する。スキルの最大レベルは『10』。



 おぉ、これがスコルの新スキル。もともと回復魔法のヒールを習得していたけど、これで支援魔法も使えるようになったわけか。



「いいぞ、スコル! 聖女らしくなってきたじゃないか。褒めてやる」


 俺は、スコルの成長が嬉しくて頭を追加で撫でた。


「えへへ……♪ ラスティさん、好きですよ♪」



 よーし、やる気も爆上げだ。

 ドンドン、材料を集めていくぞ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る