万能つるはし・ゲイルチュール

 スコルを見届け、森の中へ。

 俺は『木材』、『石』、『土』集めへ向かう。……のだが、昨日も今日も『素手』の状態。非常に効率が悪いし、疲労も半端ない。


 この状況を打開するには『道具』が必要だ。いくら元皇子の俺でも、それくらいは分かる。材料を効率よく手に入れるには……どんな道具が必要かな。


 と、腕を組み頭を悩ませていると、なにやら脳内に声が響く。



『――道具が欲しいか?』


「どこかで聞いた声だな」


『久しぶりだなラスティ。を覚えているか』


「無人島開発スキルをくれた人だろ。感謝してるよ。おかげで俺はたくましく生きている」

『それは良かった。そして何やら手詰まりのようだな。道具が必要ならくれてやろう』


「でも、貰ってばかりもなぁ」


『遠慮するでない。この島を国に変えるのではなかったのか? 故郷のドヴォルザーク帝国を、父親をギャフンと言わせるのであろう』


「なぜそれを……」


『余はいつでもお前を見ておる。あのエルフにして聖女のスコル・ズロニツェとは仲良くやっているようだな』


「なッ!! 見てたのかよ!」


『当然だ。力を与えた以上、余には見守る義務がある。それに見てみたいのだよ、ラスティ、お主がどこまで島を開発できるのかをな』



 なんだか見られているとやり辛いのだが……けど、この声の主のおかげで俺はまだ生きている。しかも、今度は道具をくれる? どんな女神様だよ。いや、女かも分からんけど。



「なあ、なんでそんな無条件で俺に優しくしてくれるんだよ。俺なんかを助けてメリットがあるというのか」


『ある。お主は元魔王の子だ。だからだ』


「それって本当の事だったのか。親父の妄言か何かかと」


『全ては真実だ。ラスティ、お前には力がある。その力を正しく使えばきっと良い島国を作れる。だからこの万能ツール『つるはし』を授けよう』



 目の前に光が降りてきた。

 それはピカッと光ると『つるはし』が登場した。俺は『つるはし』を手に入れてしまった。……って、どういうこっちゃ!


「これでどうすればいいんだ?」

『よく見てみるがいい』



 [ゲイルチュール]

 [攻撃力:10]

 [効果]

  槍の神が使用していた万能つるはし。通常のつるはしと異なり『耐久値』が存在しない。特定の材料を5~10個ほどいっぺんに入手できる。


  ①木を伐採できる。

  ②石を採集できる。

  ③土を収集できる。


  入手した材料は、自動的にアイテムボックスに保管される。重量をオーバーした場合、つるはしは使用不可能。



 こりゃスゲェや。この『つるはし』があれば、どんどん材料を集められるわけか。



「ありがたい! てか、最初からくれたら良かったのに」

『順序というものがあるからな。だが、これで無人島開発は飛躍的に事が運ぶだろう』

「ありがとう、名も無き声の人」


『おぉ、そうだった。そろそろ名を名乗っておこう。余の名は“ハヴァマール”という。では、またどこかで会おう。さらばだ』

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