【 アレ 】


 私はベッドから飛び起きて、部屋にある鏡で自分の姿を見た。


「えっ……? 何で……?」


 そこに映っていたのは、彼のお母さん。

 そう、タカヒロ君のお母さん、あの妖艶ようえんで美しい『静香しずかおばさん』の姿だった……。


(ど、どうして……? どうして私、静香おばさんの格好になっちゃったの……?)


「母さん、お腹空いたね。朝ご飯、食べよっか」


 彼はベッドで横になりながら、私の体を嬉しそうに眺めている。


 私は思わず、彼に合わせて、こう言った。


「そ、そうね……。ちょっと、朝食の準備してくるね……」


 急に恥ずかしくなり、脱ぎ捨ててあった下着とパジャマを持って、彼の部屋を出て行く。


『バタン』


 部屋の扉を閉めて、飛び出しそうな心臓を押さえ、何度も深呼吸をした。


 なぜこんなことになっちゃったのか……?

 昨日まで、私は彼の同級生の『美玖ミク』だったのに……。


 心当たりはある……。


 あの謎の占い師にもらったもの……。


 アレが原因に違いない。


 そう、あの謎の『』だ……。



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