【 んっ? 】


「うん~ん、ふわぁ~」


 彼が一度、布団の中で目いっぱい伸びをして、大きく口を開けて欠伸あくびをする。

 目をゴシゴシと擦りながら、こっちを見た。


 彼も服は着てなさそうだ……。

 そして、一言……。


「母さん、おはよう」


(はっ?)


「母さん、昨日はありがとう」


(へっ? 母さん……? ありがとう……? 何……?)


「母さん、今日は休みだから、ふたりでゆっくりできるね」


 タカヒロ君は、頬杖ほおづえをつき目を細めて私のことを嬉しそうな顔で見つめてくる。

 そして、私の肩を抱き、おもむろに唇を重ねてきた。


「きゃっ……、んん~……」


 私は突然、口をむさがれパニック状態だ。

 思わず彼の肩を何度も叩いた。


「ぷは~っ! な、な、どうして……。タカヒロ君……」


「えっ?」


 彼は驚いた表情。

 私も驚いている……。


 だって……


 だって……


 生まれて初めてのキスだったから……。



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