第9話 カンボジア 凸凹道
カンボジア。内戦があった。道路状態がひどいことで有名だ。
私はサイゴンからプノンペンへ、プノンペンからシエムリアプに入り、そしてタイへ行く予定だった。
サイゴンからプノンペン。カンボジアに入る国境での待ち時間は苦痛でしかなかったが、5ドルのバスはエアコンがあり、強い日差しの下でも苦痛ではなかった。道も悪くない。
プノンペン~シエムリアプである。話では、コンポトムからシエムリアプの道が悪路だという。
しかし、そんなことはなかった。快適だった。ただ、道の両脇の湿地帯の、風が吹けば壊れそうな家にすむ人々を眺めていれば良かった。
問題は、シエムリアプ~ポイペット(タイとの国境の町)だった。
シエムリアプ-バンコク間 11ドルのバス。
これはひどかった。ぼろいバンに20人ほど旅行者をつめこみ、西洋人の異常なまでに大きい荷物を載せる。ただただ狭かった。
そして道が最悪。凸凹! この漢字が最適という状態。私は人生でこれほど車で揺られたことはなかった。前後左右上下、揺れ続ける。
積まれた荷物が均衡を失い、崩れ落ちる。西洋人が車を止めるように叫び、文句を言う。険悪な雰囲気。
「人を乗せすぎだ!」
「同感!」
いや、君らの荷物も大きすぎるけどな、と私は内心でつぶやいていた。私の荷物は狭い足下に収納できるほどのものだったのである。
苦行は2時間続いた。もっともひどいところは1時間ほど。時速20キロ程度で走る(10キロ? もっと遅いかも)。とにかくスピードを出したら、車内は地獄絵図となること請け合い、それぐらい揺れた。
あつい。舗装されていない道路で車は砂埃を巻き上げる。でも、知ったことか。みな、暑いから窓をあけている。ボロバンのエアコンなんて、誰も期待していない。
暑さと砂埃と揺れ。それに耐えながらポイペットに到着。
途中、橋が壊れていて、30分ほど足止め。修復現場を見物にいくと、5センチほどの厚さの長い木を、釘で固定するため金槌をたたいている人が数人。こんなので直るのか。私は愕然としていたのだが、それは応急処置だったらしい。あんがい、はやく直ったのだった。
道はひどかった。それでもまだ道はよくなっているとネットで見た。何年か前はもっとひどかったらしい。
――これよりひどいことがあるのか。
私は疑った。
国境でタイへ入国。ビザはない。正式には、タイ入国にはビザか帰りの航空券が必要という。大丈夫かと心配しながら列んでいたが、杞憂だった。すぱっと入国できた。
国境ではあいかわらず待つ。
バスがきた。二階建てのバス。エアコンはさむいほど効いている。それよりなにより・・・
道が良い!
タイってすばらしい。ベトナムも道が悪かった。カンボジアはもっと悪かった。
タイ。それは先進国であった。
日本。それはさらなる先進国だ。
道に穴が空いてないってすばらしい。これほど痛感したのは、人生で初めての経験だった。
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