第3話 中国 陽朔(ヤンシュオ)

 陽朔。ヤンシュオ。桂林(グイリン)と並んで風光明媚な景勝地。奇岩奇峰が乱立し、その奇峰群と河が同じ視界におさめられたとき、山水画で見たあの風景が目の前に広がることになる。


 月亮山という、山頂付近にぽっかり穴があいた山もある。これも美しい。

 この街は快適だった。宿も安い。50~100元で個室で泊まれる。ドミトリー(大部屋)ならもっと安いだろう。ビールも安い。


 観光をして、景色を見ながらビールを飲む。


 ポン・チー(他者の捨て牌を貰って順子:ジュンツ:数字並び 暗刻:アンコ:同じ文字・数字 をつくる)をしまくる中国人の麻雀を見物し、屋台や露店をまわる。外国人も多く、ネットカフェもある。


 美しく(街は中国ゆえ汚いが)非常に滞在しやすい街だった。


 陽朔へは、広州から桂林行きのバスに乗り、途中下車した。そのバスは10時30分に出発して、陽朔に着いたのは19時ぐらいだった。

 このバスが非常に揺れた。道が悪い。山道はカーブが多い。なのにドライバーは飛ばす飛ばす。

 ゆえに遠心力と慣性によって、私たちは左右に揺られ、肘置きに肘や腰を何度も預け、やがて痛み出す始末。気分を害して戻す人も、私の周りだけで2人。


 このバスはテレビがついており、バス内で中国のコメディ映画を見た。中国語の字幕だったので、多少はストーリーがわかる。

 この映画、ジャッキー・チェンのようなアクションと笑い、それに麻雀を混ぜた物語。

 主人公の武闘派中年女性は麻雀が好き。彼女は麻雀をしているときにテンパイ(当たり牌が来ればあがり)した。


 彼女の待ち牌は七萬。八萬と九萬を持っている。彼女がツモる(山から牌を取る)。はずれ。次の番。


 牌をとり、盲牌(モウパイ。親指の感触で何の牌か予測する)すると、あたりの予感!

 親指をゆっくりずらしていくと「七」の上半分が見えてくる。


 横線の長い「+」が見えたのだ。これは七萬しかない。


 確信した主人公は、牌を台に叩きつける。 バンッ!



 牌はなんと十萬。


「十萬!?」


 対戦者の3人は目をむいて驚く。ツモった本人も驚く。


 当然だ。数牌は1~9しかなく、10なんてないのだ。

 ともかく8、9、10で(ジュンツ)が揃い、彼女はあがった――かどうかは覚えていない。

 ただ、「十萬」は面白かった。


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