犬男
春香
ひさしぶり
「きゃははっ」
「ほらっ、りこちゃんみーつけたっ」
「みつかっちゃったぁっ」
私が幼い頃、近所のおじさんによく遊んでもらっていた。いろいろな遊びをしてもらったが、1番記憶に残っているのが「かくれんぼ」。
私がどんなに難しいところにかくれても、おじさんはすぐ私を見つけちゃう。
他の場所を探すそぶりもなく、一直線に私のところに来て、見つけてしまうのだ。
昨日、ショッピングをしているときに、そのおじさんと久しぶりに再開した。
「りこちゃんっ」
「あ、おじさん!お久しぶりですっ!」
「久しぶりだっけ?」
「最後にあったの何年も前じゃないですかぁ」
そんな会話をした。
私の記憶ではおじさんに最後にあったのは何年も前だったのだが、おじさんはまるで最近も会ってたかのような口調だった。
そのおじさんとは、もう何年もあっていなかった。
はずだった。
不思議なことにその日から、出かけ先でおじさんに出会うことが頻繁にあった。
「りこちゃんっ」
「おじさんっ、また会いましたねっ」
おじさんはいつもニコニコしてた。
それからも、おじさんに何度かあった。
数年後、わたしは北海道の大学に通うために一人暮らしを始めた。新生活に胸を躍らせ、日々を過ごしていた。
大学にも慣れて、友達も少なからずできた頃。
わたしの家に、仲のいい4人であつまってゲームをすることがあった。
「ちょっとコンビニいってくるわぁ」
「はーい」
友達がお菓子を買いにコンビニに行った。
帰ってきた時に、少し怖い顔をしていた。
「どうしたの??」
「りこ…なんか変なおじさんがりこの郵便受けの匂い嗅いでたよ…」
「え…?」
変なおじさんと言われ、だれだかさっぱり検討もつかなかった。そもそも郵便受けの匂いを嗅ぐっていうこと自体がおかしい。
私が北海道に引っ越すことは、仲のいい1部の友達と家族くらいしか知らない。
色んな人を考えたけど、だれもそんなことをする人はいないはず。そんなことを考えていると。
ピーンポーン。
チャイムがなった。
「え、だれだろう。ちょっと出てくるねっ」
小走りで玄関に向かう。
鍵をあけ、扉を開ける。
そこにはおじさんがたっている。
「りこちゃんっっ」
犬男 春香 @haruka023
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます