守りたい存在
目的を果たした俺は男を人目につきそうな場所に放置し後を去った。後は警察が何とかしてくれるだろう。
実を言うと俺は無能力者ではなくある能力を持っているが単に扱いきれていないだけである。
なぜみんなに言わないかと言うと単純にめんどくさいからである。
家に帰り玄関を開けるとドタドタとこちらに歩み寄ってくる足音が聞こえた。
妹の井口 杏花(いぐち きょうか)である。妹と言っても義理で訳あって俺が育てることにした。
妹はお玉を片手に俺の顔を見るや否やいきなり叫んできた。
「遅い!いったい何時だと思ってんの!」
「すまん。すまん。」
ちなみにこいつも能力者である。
能力は「触れた物体を拘束する能力」。発動対象は無機物だけでなく生物も含まれている。
匂いを嗅いでみると何やら良い香りが鼻腔を突き抜けた。
「今日の晩御飯はなんなんだ?」
「聞いて驚け!鶏肉のトマトソテーだ!!」
「どういうキャラだ?お前?」
煌といい杏花といい俺の周りにはテンションが高い奴しかいないのか?といささか疑問に思うこの頃である。
会話を終え私服に着替えたあと椅子に座り合掌する。
「いただきます。」
「いただきます~!!!」
妹が煩いことはいつものことなので敢えて無視して俺は黙々と目の前に置かれたご飯を食べていた。
不意に妹が声を掛けてきた。
「こんな時間までどこ行ってたの?」
妹は昔の記憶がなく俺のことを本当の兄だと思っている。妹にも俺の能力のことは言っていない。
言わないのは下手に心配されるのを防ぐためである。
「友達と遊んでいたんだよ。」
「遊ぶのは良いけどもう少し早く帰ってきてね!」
「分かったよ。」
雑談しているうちに食べ終わったので再び合掌して食器を片付け二階に上がった。
早くこの能力を使いこなせるようにならないとな。あんな噂があったのだ。妹に危険がないとも限らない。
改めて思う。この世界は危険だと。一昔前までは『超能力』なんてなく誰もが平和に暮らしていたらしい。
でも今の時代は能力を行使した犯罪や大規模なテロなどが活発化しつつある。
そんな人の命が危険に晒されることが日常的に行われている。
俺は突如として力を持った人間がどんな力の使い方をするかを知っている。
それは犯罪だ。自分が得た力を誇示しその力で今まで抑えていた欲望を解き放ち欲望のままに生きる。
そんな人間をごまんと見てきた。さっきの男だってそうだ。自分が強いて過信して犯罪を起こす。
だから俺は早くこの最強とも言えるこの能力を完璧に制御しなければいけない。
じゃないと大事な人すらも守れないから・・・。
そんな暗いことばかり考えていると眠気が覚めてしまった。
仕方ないと考えながらも俺は羊を数え早く寝れることを願っているのだった・・・。
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