第3話

【 鮭とかえる 】2


◎ 第1章 初めの春

第5話 楽しい毎日


山はすっかり春模様となりました。

水の中も同様です。

だんだんと水温も上がってきました。

魚も昆虫も水草も。

そこかしこで生命が溢れています 


あの小さなふたりは、どうなったのでしょう。


いました!

鮭の子どもとかえるの子どもです。

大きさこそ違えども、よく似たかたちのふたりです。

ぽっこりとした大きなお腹は、鮭の子ども。

ひとまわり小さいけど、やっぱりぽっこりとしたお腹はかえるの子どもです。

どちらもぽっこりお腹の栄養が、ご飯代わり。

だから、何も食べなくてもお腹が空きません。

夜に寝ること以外は、ふわふわゆらゆら、一日中遊び続けています。


明るい陽射しは、水の中の枯れ葉のベットにも降り注ぎます。


「お腹がぽこぽこ。

なんだか幸せだねぇ」


鮭くんが言います。


「お腹がぽこぽこ。

なんだか幸せだねぇ」


かえるくんも言います。


流れのおだやかな淵の中。

毎日楽しく遊んで暮らすふたりです。

おだやかな流れに任せて行ったり来たり。


ふわふわ、ゆらゆら。


水中を流れていく落ち葉の上に乗ったり。

ときどき流れてくる大きな氷のかたまりに乗ったり。

ゆったりとした時間が流れます。

時には。

亀じいさんのむかし話を聞いたりもします。

楽しい毎日です。



◎ 第1章 初めの春

第6話 からだの変化


相変わらず毎日を楽しく遊ぶふたりです。

雪どけ水がふえてきました。

水の温度もさらに温かくなってきました。

変化は、まわりの景色だけではありません。

ふたりのからだにも変化が現れてきました。


ふたりとも、ぽっこりとしたお腹が小さくなってきました。

そんなお腹の膨らみが無くなっていくにつれて。

だんだんと大きくなっていく鮭くん。

魚らしい横長のほっそりとしたからだに変わっていきました。

かえるくんも。

大きさはあまり変わりませんが、丸みを帯びたかえるくんには小さな手足が生えてきました。


からだの大きさやかたちが違うように、泳ぎにも違いが現れます。


鮭くんは、より早く泳げるようになりました。

もう追いかけっこでは、かえるくんは鮭くんにかないません。


かえるくんは、両手足を使って落ち葉に潜ったり、一箇所に止まったまま、川の上下にも泳げるようになりました。

もう隠れんぼでは、鮭くんはかえるくんにかないません。

さらに。

かえるくんは、水の外に出ても平気になりました。


鮭くんはかえるくんが羨ましいと思います。


かえるくんは鮭くんが羨ましいと思います。


どちらもお互いが羨ましいとは思います。

が、妬ましくはありません。

お互いをすごいなぁと思っていますから。


すりすり、すりすり。


すりすり、すりすり。


頬を寄せあいます。

そして、ふたり同時にこう言いました。


「おもしろいね!」


「おもしろいね!」


お互いの違いを自然に認めあうふたりです。


よどみの中を行ったり来たり。

なかよく遊ぶふたり。

ときおり流れてきた氷のかたまりもこの何日かは、流れてこなくなりました。

水も春先とは比べるまでもなく、温かくなっていました。

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