物語通りに進まなきゃ困るんですが⁉
紗音。
プロローグ
いつもと何も変わらない日常、平凡な毎日。私、
「ちょっ、松!!」
その声と共に私の肩を揺らす人がいる。
「あー明日那、いま印刷ちゅー」
私は意識が
「松!!起きて!!!!もー資料の間に手を入れっぱなしだよ!!」
明日那の言葉にゆっくりとコピー機のスキャナ部分に目をやる。なんと、私の左手が
「いやぁー手が焼けちゃう」
「いや、焼けないから⁉もぉーまた
そう言いながら、明日那はささっと準備をしてコピー機を再び動かし始めた。私はその姿を見つめていた。
「うん。リーくんイケメソ過ぎて、何十周回プレイしたかわからないわー」
目の下の
「ん-ゲームをやっていないと、どんな姿絵かわからないわー。今度、時間があったら見てみるわ」
明日那はコピーされた書類をまとめて、ホッチキスで止めて私の手の上に乗せ始める。明日那は本当に仕事ができる。事務作業もパパっとできるが、営業に回れば天下一品だ。誰もがYESと言うほどの
明日那はサラサラロングの黒髪を一本に結んでいて、すれ違うと花のようなふんわりと香りが
対して私は事務員なので制服を着ているのだが、薄ピンクのヨレた制服かつスカートからは糸が
「もー松は可愛いんだから、もう少し見た目をシャキッとしなさいよ⁇」
そう言うと、明日那は私の手の上に資料を
私は明日那が乗せ忘れた資料を一番上に乗せて、課長の元に歩いて行った。このくらい自分でやればいいのに、この会社は昔ながらの
「ヅラ……カチョー、コピー終わりましたー」
「ん⁇なんか聞こえた気がするが、まぁいい。そこに置いといてくれ」
課長はそう言うと、机の空いているスペースを指差した。課長は身長が小さい、
私は課長が指定した場所に資料を置いて、自席に戻ろうとした。
「……ちょっと待て」
「……はい⁇」
私が振り返ると、顔を真っ赤にした課長がこちらを見ていた。
「これは何だね⁇」
「はっ⁇課長に頼まれた資料です」
私がそう言うと、課長は私の目の前に資料を出してきた。そこには私の手が写っているのだ。
「君……これで何回目だね⁇」
「……いやー課長。私の手相でも見るおつもりですか⁇」
明日那が乗せ忘れたと思っていた紙はどうやら、私が印刷ミスしたものだったようだ。そう言えば、出かける直前に何か言っていた気もするがあまり聞いていなかった。
「まったく!!松子くん!!!!」
課長は怒鳴った。オフィス中に響くくらい大きな声で。それに私は応戦してしまったのだ。
「だから!!松子って呼ぶなって言ってんでしょ!!⁇このヅラチョー!!!!」
毎回やらかす度に課長は私を『松子』と呼ぶのだ。私は下の名前で呼ばれるのが大嫌いだ。何か古臭く感じて、とにかく呼ばれるのが嫌いなのだ。
そうなると、私も切れて課長とケンカをするのが、日常茶飯事なのだ。仕事よりもケンカしている時間の方が多いこの会社では、気力と体力を使い果たしてしまう。
そのため、家に帰るとベットに
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