世の中って不条理だ!たぶん。

きりか

第1話



世の中ってさ、不公平っていうか、不条理だな〜って常々思うんだ。


あるところにはあるのに、ないところにはない…。




うん、お金って寂しがり屋だから、


多いとこに集まるって祖母は、笑いながら話してくれたけどね。




話は変わるんだけど、


少しだけ聞いてくれるかな?




随分と昔からなんだけどさ、徐々に女性の人口が減ってきたんだ。そのせいかどうかはわからないんだけど、


この世界は、男性でも子供が生めるオメガって第ニの性が出てきたんだ。


まあ、数は少ないけどね。




でさ、世の中のほとんどが、普通の男で、その人達はベータっていうんだ。


それ以外の極々わずかだけど、カースト上位の選ばれしキラキラ光るような男性らは、アルファっていうんだけどさ…。


まあ、このアルファと呼ばれる方らは、high IQの上に、身体能力も高いのに加えてイヤミなくらいに、顔面偏差値が高い!




不公平だろ?


ねっ?思うだろ?






コホン、まあ、それは置いておいて…。






希少な女性に加えて、これまたアルファより極少な存在はオメガっていわれていて、女性のように子供を産める男性なんだ…。




まあなんだ……この希少価値高いオメガの方達だけどさ、


外見がさ、


だいたいの人らが、小柄で、こうウルルンとしていて、小型犬みたいな愛らしさ満載ならしいんだけど…。


まあ、中には、極極稀に僕みたいなオメガがいるかもしれないかも?


うん。


そう、お気づきだよね?




なぜだか、僕は、その〜、希少種のオメガだ!


うん…まあなんというかさ…そうなんだ。




歴史だけある我がサイモン家では、アルファこそいないが、ベータ満載の家系には珍しいオメガだが、


僕自身は、背は軽く170センチを超えていて、


スラリとして…とは言い難く、ヒョロヒョロと伸びたと言ったほうがいいかも。




両親、兄弟全員、ハニーブロンドに、スカイブルーの瞳を持っているのに、


僕だけ幽鬼のような、白髪のようなっていうか、


真っ白な髪の色に、銀色の瞳。


あっ、マズイことを聞いたって?


いやいや、複雑な家庭の事情と違うって!


祖父の髪色と祖母の瞳っていう色合いなんだよな〜、これが!!


ですので、ご安心ください。




話しが脱線しちゃったね……ごめん。




まあ、この僕を誰もオメガって気づかないよな…。うん。


誰から見ても麗しきオメガだったら、まだどうにかなりそうだったんだけどさ。




なのにさあ、僕がオメガだなんて、どこから情報が洩れたのかわからないんだけど、


我が国の王子の婚約者候補として、お茶会という名のお見合い会に招待するって内容の収監状……もとい招待状が届いたんだ。


やっぱり、オメガってバレちゃったのかなー?


オメガっていっても、この容姿なんだよ?


ウルルンってしてないんだよ?




いやいや、


まずは、歴史はあっても、お金はない!って代表のサイモン家ですよ〜。


ないないづくしですよ?


なのに、なぜ?




まあ、たとえオメガってバレててもさ、ウチより爵位が高くて裕福なとこは沢山あるのにね〜〜。


だからなんで我が家に?


なぜに??




もともと我が領は、農産物の宝庫だ!といえば聞こえがいいが、田舎満載の領土。


しかも、貧乏子沢山っていうかさ、僕を含めて7人兄弟…。


僕以外は、全員ベータの男!!


アルファが一人でもいたらさあ〜、自然がいっぱいの我が領地も、なんやかんやで目玉商品を考えついてくれて、もう少しくらい潤ってくれているハズなんだけどさ…。


いかんせん、跡取りの長兄もベータだからさ…。




まあ、跡取りっていってもさ、跡取るものもないよな〜あはは。




我が家は、7人の息子に、優しくて穏やかな母。そんな母を溺愛している父。で、貧しいながらも楽しい家族さっ!


でも、母は、ここのとこ体調が優れない日が多くなってきて、心配でさ。


僕がオメガだから力仕事は無理だろうからって、兄さん達らの満場一致で、僕が家事担当してるんだけど…いやいや、家事も結構体力勝負なんだけどね。


見てみて!この上腕二頭筋!


えっ?どこに筋肉ついてるかわからないって?


オメガの割には、筋肉ついてるほうだと思うんだけどなあ。




ん?まてよ。


王都のお茶会に行くって、往復で1週間近くかかるそうだけど、その間、誰が家事を??もさい男ばかりでどうするよ?




それに、王都までの費用は?どうしよう?


う〜ん。


馬車なんて、荷馬車しかない…。


自慢じゃあないが、我が家、ナイナイづくしですよ?


王都行き……どうにか断れないかな〜〜?って、無理かな〜?


ひとまずこの件は、今晩の家族会議ですね!






王家の封印付きの収監状……


もとい招待状を前に早速、家族会議ならぬ作戦会議。


王都行き、腹痛の為辞退はダメですか?


あ…無理そうな雰囲気ですね…はい。




「父さん、王家からの招待を無下にすれば謀反を疑われますでしょう!」


「しかし……だな、我が家には王家の会用のものを揃えるには…」


「アナタ、急に体調が悪くなったというようにご連絡を差し上げてはいかがかしら?なにも支度してあげられないなんて…ミーシャがこのままでは不憫で…。グスッ。」


わぁ……


長兄、父、ここのとこ体調が優れず、寝たり起きたりを繰り返してる母上まで揃って…。


他の兄さん達は、やたらと難しい顔をしてて…


この重々しい雰囲気は、まるでお通夜状態?


あっ、母上、ミーシャって子供のときの渾名ですよ〜!


恥ずいから、ちゃんと、ミハイルって呼んでください〜〜!


って、涙涙の母上に言えない雰囲気です……はい。




「父上、母上、兄さん…。招待状のここのとこに、身一つで大丈夫って書いてありますよ?」




いつも冷静な次兄の一言で、


涙ぐむ母上以外は、大の男達7人がテーブルの上に置かれてる招待状を挟み、いきなり作戦会議。


もちろん、当人の僕以外の父と兄達ですよ〜。






家族会議の結果、


身ひとつでいいなら、


ひとまず、馬車がないから、畑を耕す為の馬(キャサリンちゃん♀)に乗せて行こう!


ってことになったけど……僕が留守の間、家事は?一体誰がするんですか?




第一、王都への道がわかんないよ〜!




えっ?兄さん達が交代制で家事を頑張る?


キャサリンちゃんの働き分も手作業でなんとかするって?


やはり、不安しかないっ!




納屋から古い地図を出してきて、渡されはしたのですが…。


やはり、僕一人で行かないとダメ?


生まれてから一度も、ひとりっきりになったことないんだけれど…ちょっと泣きそう。


あっ、泣いていいですか?






不安のあまり、一睡もできずに迎えた翌朝。


無いお金をかき集め、途中で食べれる用に…と、非常食の干芋を沢山持たされ、


キャサリンちゃんの老体に鞭打つような距離で申し訳ないが…と、騎乗しようとしたところ、


何やら豪華な馬車とそれを囲む騎士達。




な、何ごと〜??




「王家より、サイモン子爵家第7子、ミハイル・コリヤード・サイモン様をお迎えに参りました。」だそうです。


あっという間に、身一つで豪華な馬車に積まれ、両親、兄達に送られ………あっ、しまった!キャサリンちゃんに干し芋を積んだままだった。




先程、挨拶をしてくださったイケメンは、近衛騎士の方で、この馬車にピタリとついて護衛してくれてるんだけど、さすがは近衛騎士、騎乗されてる馬もピカピカと黒光りしてる馬体!


うちのキャサリンちゃんと違うなあ。




最初の頃こそ、馬車を汚したら…とか色々と考えて緊張しまくっていたが、あまりの乗り心地の良さに、ついウトウト。




休憩を挟みながら王都に向かっているのですが、


その休憩時間に頂く食事や、お茶にお菓子!


美味しいのなんの!


はあ〜、幸せ。


食べすぎで太っちゃうかも?




それにしても、キャサリンちゃんの脚だと1週間くらいかかるはずの道程が、わずか3日で!ここまで来ましたよ〜!3日ですよっ!


もう〜、びっくらポンですわ。


そして、この休憩の次は、じきに王都に到着ですよ〜!!


流石は王家の馬車!


あっ、帰りも乗せて頂けると有り難いんだけど…。


できたらお願いしたいのですが…ダメ?




僕の隣には、常にピタリと付いてくれてるのは、あ・の・イケメン近衛騎士様、黒い髪に、まるで宝石のようなロイヤルブルーの瞳の持ち主。


てさ、宝石は、持ってないからわからないから例えだけどさ。




あ、あれ?


どうも僕は、考えてることを思わず声に出しているみたいで、この道中、度々、このイケメン近衛騎士さんには笑われてしまってました。はい。


名前は、アレックスさんだって。


王家に仕える人って、皆、アレックスさんみたいにイケメンばかりなのかな?


あ〜、また声に出しちゃってましたか?


アレックスさん、お腹抱えながら笑いをこらえてるぅ〜!




「まず、帰りの心配だなんて…くくっ(笑)


王子の目に留まるって考えがないというか、ミーシャ殿は、無欲すぎますよ。王子の目に留まったら、宝石なんていくらでも手に入りますでしょうし…。それから、近衛には私より上背があり、見目の良い人ばかりですよ。」


またまたぁ、アレックスさんったら!


そんなに笑わなくても…。


あっ、なにげにミーシャ呼びですか?くっ、キラキライケメンオーラで呼ばれたら、嬉しくなっちゃうじゃあないですか!






この3日間、共に過ごしてわかったのだが、アレックスさんは、あまり背が高くないのがコンプレックスらしい。と言っても、僕より少し高いから、自分で思う程でないと思うんだけどなあ。


他の騎士さんらは、アレックスさんより


確かに縦も横もゴツくて…でも、アレックスさんのほうが、細マッチョでかっこいいと思う。


顔面もかっこいいしね!ウットリしちゃうレベルだよ。


だから、アレックスさんは、そのままで充分素敵だって!




そう僕が言うと、アレックスさんは、綻ぶように微笑んだ。


うわ〜、イケメンの微笑みって、眩しすぎて目が痛いです。


ぐはっ!








≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡








快適な馬車の旅は順調に進み、無事に王都に入り、


そこからしばらくしてやっと王宮に到着いたしましたよ。


それにしても、まあ、お城の美しさ!


もしかして土足厳禁ですか?


あっ、アレックスさん、噴き出した…。


靴は、履いたままでいいそうでした。はい。




汚したら、怒られるレベル?と思いながら、ソッと、白亜の城に足を踏み入れたら、床の美しさどころか、全てが、本当に凄くて!!


あまりの豪華さに開いた口が塞がらなかったよ…。


いや〜!!早くもお家に帰りたいです。


なにぶん貧乏性なもので…。


えっ?着いたばかりだから、帰ってはダメですか〜。




僕には明らかに不相応な、広くて、やはり豪華な部屋に通され、


いかにも感じの高級そうなお茶を出されたところ、アレックスさんが王宮にた・ま・た・ま・おられたという父親を伴って来られた。




それにしても、イケメンの父親、やっぱりイケメンですわ。


2人並ぶと、そっくりさんすぎて、親子ってわかるわ〜、うん。


そんなアレックスパパさんから


僕がここに呼ばれたことについて説明をしていただいた。




なにやら、この国の王は代々アルファとの決まりがあり、


王の配偶者としたオメガは、アルファを生みやすく尚且、運命の相手だと多産の場合が多々あるとかで…。




だからか、王の相手には、できたらオメガが良いと言われ、


この国では、オメガが生まれたら、王あるいは次期王の運命になりうるかもしれないから、必ず最寄りの教会、あるいは、王宮に報告しないといけないそうだ。




ただし、報告されたオメガに、運命の相手が現れたら王宮にあるオメガリストから外されるそうだ。


知らなかったなあ〜〜。




オメガがリストから外されるようになったのは、


今から数十年に、あるオメガが王の誘いを断り、王の幼馴染みであり、近衛騎士団のトップである人物と恋に落ち、2人は手に手を取り、出奔したとか…。




その後、若き王は、2人を処分せざるえなくて……。


泣く泣く爵位を降格させて、2人を王都から離れた土地に飛ばしたと…。




そのことがきっかけとなり、王の働きかけで、愛し合う相手を見つけたオメガはオメガリストから除外されるようになったそうだ。うんうん。


飛ばされた2人のその後だが、今では、沢山の子に囲まれ、貧しいながら幸せそうでなによりと…なるほど…。 




はい?両親は健勝か?って?


はいっ!


おかげさまで!




アレックスパパさんは、僕の一言に満面の笑みを浮かべ、そうかそうか…と去っていった。




なにやら、アレックスパパさん、何気にカリスマオーラがあって、緊張しちゃったよ〜と、アレックスさんに言ってみたら


ん?ん?


アレックスさん、片膝をついて、さり気なく僕の手を握りしめてきたではないですかっ?


はいっ?まるで騎士の誓いみたいなポーズで、ど、どうしたんですかっ?


「ミーシャ殿、出会ったばかりですが、貴方に出会ったときから運命を感じました。


この数日、一緒に過ごし、灰色の世界だったものが鮮やかに彩りを輝かせました。


どうか、これからの人生を共に生きてはいただけませんでしょうか?」


もう、アタマがバア〜ンだよ!


アレックスさんのこと、最初から素敵だと思っていたけど…けど、僕は、王子の相手候補として、ここに来ているのに…。


何も言えずに、ただただ溢れる涙を堪えることが出来ずにいた。


気づけば、アレックスさんに抱きしめられている…。


はあ〜〜、硬い筋肉質の身体で持って抱きしめられてる〜。


はうっ、いい匂いもする〜。


「可愛らしいことを言ってくれるね。私の我慢を試しているのかい?」


「いや…その…、僕は、王子様の相手候補として…ですね…その…。」


「大丈夫、心配しないで。すべて私に任せてくれ!幸せにするから…いや、一緒に幸せになろう! 


ミーシャは、ただ頷いてくれるだけでいいから…。」


くっ、綺麗な空色の瞳が、情欲で濃い色に変わり、その変化にも見惚れちゃってましたよ…。


いつの間にか、広いベッドに運ばれ、まだお風呂に入っていないっ!て、抵抗したんだよ?


なのに、一緒にあとで入ろうなんて言われて、一晩中むさぼり食われましたよ…。


生まれて初めての体験で、ところどころ意識が飛びまくりました…。


はい。


あくる日、あらぬところが痛みまくりましたよ〜。


なのに、アレックスさんって、君の発情期には、ここを噛むからって、うなじを舐めまくり…あっ、こらっ!いやらしく腰を撫でないで!もう、ムリ…。








そのときの僕は、てっきり、オメガリストから除外される制度のかな?くらいに思ってましたよ…。


ええ。




せっかくのご招待だし、ちゃんとお会いしてから「運命の人に出会いました。ごめんなさい」と言うつもりだったんだよ!


なのになのに〜!!


招待されたお茶会で、招待されてるオメガは、僕一人…。


そして、対面で微笑むのは、きらびやかな王子然としたアレックスさん…。解せぬ。




アレックスさんこと、アレクサンドライト王子は、


父である国王陛下が、かっての親友と、婚約者候補のオメガさんとの間にオメガが生まれたら婚姻を…と幼き頃から言われてたらしく、自分の目で相手を見極めようと身分を隠し、騎士に紛れて我が領まで乗り込んできたとか…。


ん?


父上、母上……王家に対して、なんてことしてくれちゃってんですかっ!!






改めて結婚を申し込まれ、僕の薬指には、王家に伝わる国宝級の指輪がはめられ…。


失くしたら、胴と首が離れる〜〜!と、青くなって外そうと試みたら、


「ミーシャ、その指輪は、私の愛そのものだ。我が妻となり、王家の一員となる証。まさか、外そうなんて思ってないよね?」


アレックスさん、笑顔ながら、目が怖い…。


ヒュッ、喉から変な声が出てしまいました。


「め、滅相もございません……。そのようなことは、決して…。」


こ、怖っ…。ガクブル…。






≡≡≡≡≡≡≡








それから程なく、国中に、王子のハートを射止めた、辺境の地の麗しきオメガとの婚姻が発表となった。




その後、国王の退位に伴い、


新しい国王と、その横には新しく王妃となった麗しきオメガが常におられた。


二人は、いつまでも仲睦まじく、多くの子宝に恵まれた。


王妃の故郷も、農産物に恵まれ、豊かになったとか















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世の中って不条理だ!たぶん。 きりか @rika1122

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ