第2話:レッツクッキング!

 スープにはケチャップとマヨネーズ、そしてトウガラシをたっぷりと入れます。お肉は骨ごと入れましょう。灰汁取りなんてもちろんしません。


「うふふ、うふふふふふふっ」


 私はニコニコと微笑みながら、蛇を丸ごとブツ切りにしました。塩も振らずにフライパンへ投入。皮は剥いたほうがよかったのかしら? 蛇を調理した経験がないので分かりません。


「きゃっ!? あ、あはは、あははははははははっ!!」


 ブランデーを上からかけると、ぼんっと炎が燃えあがりました。一度やってみたかったのです。なんだか楽しくなってきて、私は大きな声で笑い出しました。


 最初に厨房で見かけたときは、蛇なんて怖い。何でこのお屋敷にはこんな食材があるのだろう? 触りたくない……。と思っておりましたけど、やけくそになれば何でもできます。


 私は今まで触れなかった、怪しげな食材を次々と鍋に投入しました。


 これはマンドラゴラ。

 叫んでいる人みたいな変なお顔が素敵です。


 こっちはコカトリスの卵。

 なんだかブヨブヨしています。


 これは何かしら? 動物の爪?

 黒くて大きくて尖っています。


 様々な食材を鍋に投入していると、フライパンの炎が落ち着いてきました。

 中を見ると、生焼けの蛇が表面の皮だけ焦げています。あんなに火が燃え盛っていたのに、なかなか焼けないものですね。やっぱり皮は剥くべきだったのかしら?


 面倒くさくなってきたので、私はそれも鍋の中に放り込みました。

 なんともいえない紫色になった謎のスープが、ぐつぐつと煮立って妙な異臭を放ちます。


「イーッヒッヒッヒ! イイーッヒッヒッヒ!!」


「……え、奥方様?」


 両手を掲げて私が哄笑していると、ふいに背後から誰かの声がかかりました。

 振り返ると、真っ青な顔をした魔族の使用人が立ち尽くしています。


「はい? 何か御用かしら?」


「い、いえッ!? すみませんッ! 間違えましたッ!!」


 尋ねると、すぐに立ち去ってしまいました。

 いったい何を間違えたのかしら? おかしな方ですね。


 私は鍋へと向きなおり、料理の続きに取り掛かります。


「イーッヒッヒッヒ! イイーッヒッヒッヒ!!」


 あ、あれも入れてみましょう。オバケさそりの尻尾の部分。

 ケルビーの肝臓。こっちはペガサスの胸肉ですね。


 ……今日は、デミアルド様のお父様がやって来る、とってもとっても大事な日。


 素敵な料理を食べてもらって、もう私のことを国へ帰らせてもらわなくっちゃ!

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