第22話陰キャはブロックがストレス
翌日の火曜日、俺は大学を休んだ。
いや、ちゃんと包み隠さずに言うのなら『サボった』のほうが適切である。
もちろんサボったからにはサボったなりの理由がある。しかしまあ、今回そのあたりについてはお察しくださいという感じだ。
本日は必修授業がない。つまり同じ学部のやつらと学校で会う可能性はほかの曜日と比べると比較的低いわけだ。
しかしとはいっても、絶対合わないという保証はどこにもないのもまた事実。
それに今日入っている授業はどれも定期試験が行われないものばかりである。
なので一度の欠席で単位が危うくなるような授業でないことも手伝って、俺は意気揚々と布団にくるまったまま二限の開始時刻を迎えたというわけだ。
「......ねむ」
昨晩は全くと言っていいほど寝つけなかったので今日の寝起きはいつもに増して最悪だ。
枕元に置いてあった携帯で時間を確認すれば、もうそろそろ十二時になろうとしていた。腹の虫がくうと鳴くのもうなずける。仕方なく布団から這い出る。
こういう時に自分でなにか作らないと何も出て来ないのが一人暮らしのつらいところだな......。うーさむい。
「......目玉焼きでいいか」
冷蔵庫から卵と適当な材料を取り出しフライパンを火にかける。ご飯は昨晩炊いておいたものがあるので問題ない。
カリカリになるまでベーコンを焼いて、出た油で卵を焼く。蓋を洗うのが面倒なので今回はターンオーバーだ。
卵をひっくり返したらその間に皿を出しそこへ雑に盛り付ける。最後に卵にソースをかけ、これにて完成である。うん、我ながらいい出来だ。伊達に数か月ほとんど毎日作っていない。
箸と一緒にいそいそとちゃぶ台に持っていく。
「......いただきます」
味についてはべつに、いつも食べているのでそこまで違いが分からない。ツイッターのタイムラインを眺めつつ食べ進めていく。
――と、
「あん?」
ピロリンッと軽快な電子音とともにスマホがバイブレートした。
この時間に通知などめったに来ないので一瞬なにかと思ったが、見てみてばバイト先から今日のシフトを追加できないかという打診だった。
いつもなら当日のシフト追加など秒で断るところなのだが、今日はちょうどいい。
俺は手短に了承の旨を返信し、トーク画面を抜ける。
するとほかのトークルームが並んだ画面に移った。
一番上に来ているのがさっき連絡があったバイト先の塾長で、二番目にバイト全体のグループ。
そして、三番目。
いかにも陽キャラっぽいアイコンをタップすれば、もうなんども見返したやり取りが表示される。
「......これはもう、必要ないか」
そうと決まれば早かった。
トークを削除し、友達一覧から小幡を探す。
そして名前を横にフリックした、その時だった。
「――っ!」
いまだに聞きなれない電子音が耳を打ち、手の中でスマホが震える。送信者の名前を確認して、思わずつばを飲み込んだ。
でも、ここまで来たからにはもう引き返せない。
「......ふぅ」
初めて人ブロックしたけど、こんなきついのかよ......。
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