第14話陰キャは約束を破らない

 翌日の火曜日は必修授業がなかったため俺と小幡は学校で一度も会うことなくその日の授業を終えた。

 LINEのほうも音沙汰なしで、一応交換したその日のうちに一言「水曜日は二時くらいに行くから、よろしく!」と送られて来たものの、それ以降やり取りはない。

 ほんとにただの連絡先として登録されただけのようだ。

 もうすこし雑談成分多めかと思っていたが、その予想は大きく外れた。


 とはいえ約束が取り付けられているため水曜日、つまり明日会うことは確定している。明日は一、二限に授業が入っているので二時となると帰ってきたらすぐ小幡が来る計算だ。


「明日か......」


 狭い湯船につかり風呂の天井を見つめつつ、思わずそうつぶやいた。

 一応言っておくが、いまのは「つい二日前に来たばっかなのにまたかよ」というあきれ成分を多分に含んでいるだけで、べつに期待して浮足立っているわけじゃないんだからねっ!

 ......まあとにかくそんな感じで火曜日を終え、そしてついに、水曜日である。


 ***


 朝起きてすぐカーテンを開けた。

 本日は雲一つない晴天。


 ほこり舞う薄暗い教室で授業を受けているのはもったいないくらいのいい天気なのだが、そろそろ定期試験も近いということを考えると休むわけにはいかなかった。くそう。

 眠い目こすりながら特に興味がない内容の授業を受け終え、帰宅したのが午後一時。


 もっと遅い時間に家に着くと思っていたが、二限の授業が相当早く終わっていたようだ。

 受けていてそんな感じはしなかったが、あまりに授業が退屈で実際の時間以上に長く感じたのでこれでちょうどトントンくらいだろう。


「まだ小幡は来ないか」


 さておき、小幡が来るはずの時間までは一時間ほどの余裕がある。

 背負っていたリュックを下ろしながらきょろりと部屋全体を見回す。


 ......しかしまあ、これはちょっと整理しないとまずい。

 脱ぎ捨てた衣服が散乱し、適当に放り出してある本がところどころに落ちている。

 幸い散らかっているだけなので時間はかかるが整理すれば客人を通せるくらいにはなるだろう。


「まあ、まだ本当に来るかどうかわからんけど......」


 近場から整理整頓に手を付け始める。

 重いものを持つというシーンはなかったが、如何せん量が多かった。

 しかしそれらも時間が経つにつれて整理されていき、最後に今日使うであろうコントローラーを準備する。そして気づけば、部屋の整理だけでなく小幡を迎え入れる姿勢も万全に整っていた。


「よし......」


 しかしこれで満足してはいられない。

 舞台は整った。

 あとは役者を待つばかりである。

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