七つ星家の怪異調査(のメモ)
砂漠の使徒
はじめに
きっかけ
「なんだこれ……?」
俺が蔵の中で見つけたのは、古びた本だった。
かなりほこりが積もっていて、ずいぶん前からここにあるらしい。
紙は黄ばんでいて、ところどころ破れ、染みもある。
そして、表紙には墨で『七つ星怪異録』と書かれている。
「七つ星……怪異、録?」
怪異とはなんだろうか?
それに、七つ星ってことは俺の祖先が関係してるんだよな?
中には一体何が書かれているのか。
手に取り、表紙をめくる。
「うっ……」
かび臭い匂いが鼻をつく。
むせそうになるのを抑え、最初のページに目を通す。
「この書物我が七つ星家に伝わる七つの怪異記録せしものなり。これより書き記すことは、けして他言無用。もし秘密破られることあらば、災い降りかかるだろう」
よほど重要な事が書かれているに違いない。
災いが降りかかるとまで警告しているのだから、執筆者はかなり神経をつかっているみたいだ。
七つ星家と言っているから、何かこの家の重大な知られたくない秘密でも書かれているのだろうか。
ますます気になる。
俺はさっそく次のページを……。
「明ー! ご飯よー!」
やべ、母さんが呼んでる。
とりあえずこれは後で読むことにして、飯食いに戻るか。
俺は本を抱えて蔵を出た。
明日にでも詳しく読み始めよう。
今日は蔵のものをあれこれ物色して疲れたし。
「はーい、今行く!」
―――――――――
俺の名前は七つ星明。
現役高校生の17歳。
ってそんなことはどうでもいい。
これから俺はこのノートに自由研究に使えそうなことをメモしていく予定だ。
え、自由研究を高校生がやるのかだって?
うるせー、俺の高校生は毎年夏休みの宿題で自由研究があるんだよ!
しかもちゃんと調べないと後で痛い目見るしよー。
なぜっかってーと、発表があるんだよ、クラスで。
特に優秀な自由研究は全校生徒の前で発表させられる。
先生もクラスの名誉とか言って必死になってる。
だから適当な発表した奴は先生にこっぴどく怒られる。
で、今年俺は祖父母がいる実家に行ってみることにした。
ここはたいして面白いものもない田舎だからあんまり行きたくないんだけど……。
今年は例外、あることを思い出したから。
それは実家にある大きな蔵。
もう建ってから何百年も経ってるような古びた白塗りの蔵だ。
いつも鍵がかかっていて、入ったことはない。
けど、だからこそ未知のお宝に出会えるかもしれないと思った。
テレビで見るようなすごく高価な壺や掛け軸とかがあったりするかも。
自由研究の題材になりそうなものがたくさんある予感がする。
意外にもじーちゃんはすんなり鍵を貸してくれた。
「気を付けるんだぞ」と、なんともいえない声色だった。
じーちゃんも何があるのかよくわかっていないのかな。
まあ、いっか。
俺は錆びついた南京錠に無理やり鍵を押し込む。
固くて開くか怪しかったが、外れる。
「……」
蔵の扉に手をかける。
この先に何が待ち受けているのか。
期待を胸に抱き、扉を押す。
ぎぎぎっと音を立てて、ぎこちなく奥に進む。
中は真っ暗で、電球の一つもない。
懐中電灯で照らすと、木箱や壺、なにかよくわからない農機具みたいなものが所せましと置かれている。
「おわっ!」
足元をネズミが駆けていった。
都会でもたまに見るけど、こんなにでかいのがいるのにびびった。
こんな生物が巣くっていると考えると、少し躊躇した。
しかし、やるしかない。
俺は目につく壺を手に取り、眺めて……。
「全然わかんねー」
某テレビ番組の専門家じゃないんだから、壺の価値なんて知る由もない。
それならいっそ、これを題材に自由研究を……。
いや、そんなのごめんだ。
クラスのみんなになんて言われるかわかんねー。
それに、こんなものよりもっと心躍るものがここには眠っているはずだ。
そう考え、俺は壺を元の場所に戻す。
次はこの木箱だ。
ここに入っているのはなんだ?
蓋を開けると、一番上に巻物がある。
紐をほどいて、広げてみる。
「七つ星家……系図?」
ああ、家系図か。
かなり古そうだ。
知らない名前しかない。
なんか、これはさすがに使えないかな。
じゃあ次、これ見てみるか。
俺は巻物の下にあった本を手に取り、タイトルを……。
「なんだこれ……?」
―――――――――
「ふふ~ん♪」
俺はごきげんな気持ちで布団に入る。
なぜなら自由研究に使えそうな、とびきり面白いものが見つかったから。
さて、明日から調査を始めるぞー!
待ってろよ、七つ星家の怪異共!
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