心臓とあなた

私の心臓をあなたに。



 そう言って彼女は旅立った。僕を残して、遠い世界へ消えてった。


 誰もこんなことは望んでないのに、それを彼女は、「ヒーローみたいで格好良いから」「人生の終わり方として美しいから」「あなたの心臓になれるから」そんな下らない事のために実行した。


 そんな下らない事の為よりも、僕の為にも生きて欲しかった。


 僕のやり残した事や、やったことない事、見たことない世界に、聴いたことのない音、それらを君には楽しんで欲しかった。


 もう届かないだろう言葉を風船に括り付けて空に放った。

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