300字未満短編小説達

モノクロ猫

猫と未遂

 人生最後の日記を書いたつもりだった。部屋は片付けた。物は全部捨てた。遺書だって残した。心残りのないように、告白だってした。夢を託した。もう終われたはずだった。

 しかしそいつは私をこの世界に連れ戻してしまった。そいつは口を開けてたった一鳴き「にゃー」と鳴く。

 更に「にゃー」と、猫は空気を読まずに『かまって』ってずっと鳴く。

 人間の意志とはとても弱いものだ。たった一匹の猫によって変えられてしまうのだから。私は途中まで締めた首の縄を解く。

 なぜだか目から涙が溢れた。私は罪なその猫の頭を撫でて構ってやった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る