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「ハンカチ落としてるよ。ほら…そこに」
あ、ぜんぜん気がつかなかった。けど私のじゃない。
ま、いっか。とりあえず私は、礼を述べ述べそれを拾い上げました。
ふーっ…
一瞬ヒヤッとしましたが、どうやらバレてなかったようです。『お嬢ちゃん』って言われましたしね。
でも考えてみれば、いませんよね。わざわざ『君、本当は男の子だろ?』なんて指摘してくる人。
普通、チラ見するとか、ひそひそ話で終わるのが、せいぜいだと思います。
あ、おにぎりのコーナーが空きました。ささと買って帰りましょう。
その後、私はおにぎりを2つ選んでカゴに追加。お会計と共に、さっきのハンカチを店員さんに渡しました。
ちなみに、見知った店員さんなので、普段の私を覚えていないということは、まずないはずです。
が、その普段の私といまの私とが、彼女の頭の中で重なることはなかったようです。おそらく勘づかれることなく、私は店を後にしました。
うーふーっ…
もちろん、たった数分の買い物に、これだけ疲労感を覚えたのは初めてです。
それも自業自得。姿が姿だけに、自意識過剰になっているからでしょう。
やがて部屋に戻ってお茶を飲んだら、そんな思いも消えて、ようやくリラックス。お気に入りのリラッ〇マの縫いぐるみを抱えながら、私はベッドの縁に寄りかかりました。
ヘアゴムからおにぎりまで、目の前の白いミニテーブルに並べた品物を、なにげに見つめながら、しばしぼんやりと。
確かに、このローテーブルといい向こうのドレッサー他といい、少女趣味ですよね。
もうじき20歳というのに、しかも男の子なのに、部屋自体パステルトーンですしね。
我ながらお恥ずかしい。でも、やめられない私って…
それはそうと、きょうは少し自信がついたので、次のお休みには、もう少し遠出してみたいと思います。
そうだ、駅の向こうの古道具屋さんへ行こうかな。
行きつけどころか、すっかり顔馴染みのあそこでバレなければ、私の『変身』も捨てたものじゃないってことの証明になりますしね。
じゃあ、次は何を着ていこうかな。
あ、思い切ってアレを着ていくのはどうかな。
うん、そうしましょう。
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