第3話 クマですね・・・。

 1ヶ月後。


 先生はエコー写真を見せてくれながら、

「ここが目。ここが口。ここが足。ここが手。ここが耳ですね。元気に成長してますよ。間違えなく!!!」


 先生の次の言葉を、私は、息をのんで待った!!


「クマですね。」


 クマですね・・・。

 クマですね・・・・・・・。

 クマですね・・・・・・・・・・・・。

 クマですね・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 クマですね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 脳内、無限ループ。


 私のお腹の中に、クマ!!!!


 きっぱり言われて、同時に嬉しい気持ちが湧いてきた。


 私のお腹の中にクマの赤ちゃん。

 新しい命を授かるのは、女性として、この上なく嬉しかった。


「それでは、安静にしてください。お酒、カフェイン、薬などの摂取は控えてくださいね。」


●●


 それからというもの。

 会社でも、コンビニのレジでも、トイレでも。どこにいても、お腹の中にクマの赤ちゃんがいると思うだけで、ニコニコしてしまう私でした。


「早く赤ちゃんに会いたいなぁ。」


 思い立ったが吉日。その勢いで、頭の中が赤ちゃん一色になると、上司に退職届を提出した私。


「お世話になりました。一身上の都合で退職します。」

「田中、目がクマになってるけど、大丈夫ですか? 変な薬でも飲んでないですか?」

「いいえぇ、何もぉ。」


 妊娠しました。・・・とは言えず、退職理由を曖昧にしてしまった。クマの赤ちゃんが実際に産まれてくるまでは、自分でもちょっと疑っていたのだった。心のどこかで本当は、人間の赤ちゃんが産まれてきそうな気もしていた。


●●


 さて、退職し自宅で休養しながら、赤ちゃんを迎えるための準備がスタートしました。


 お布団+ベッド、お風呂、お洋服、オムツ、哺乳瓶、抱っこ紐!!!

 これがこれが、いろいろ種類があり、なかなかに選ぶのが難しい。


 ネットでレビューを読んだり。

 レンタル出来る物もあり、調べれば調べるほど楽しくなってきた。


 そうして、大体の物は東松屋で揃えたのでした。


「よしっ!!! 準備完了! さあ、赤ちゃん。いつでもいらっしゃい。」

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