第15話無詠唱魔法


 無詠唱魔法――


 それは詠唱の代価として何かしらの行動アクションを行い発動する魔法――


 そしてこの《キスキズヒール》にも発動する為に必要な行動アクションがある。


 しかしそれは……。


「傷口にとろけるような口付けをする事により、数多の傷口は塞がる……」


 めちゃめちゃ卑猥だった――


「っんだこれぇぇぇぇッッッ!!」


 エッロッッッ!!!!


 傷口にとろける口付けしたら傷治っちゃうんすか!?


 俺は魔法リストの詠唱欄を見て顔を真っ赤に染めあげながら発狂する。

 無詠唱の代わりに行動が代償となるタイプの魔法……。

 初めて見るパターンの魔法に、なかなか便利じゃん! と歓喜したのもつかの間、まさかのハードな内容に純粋無垢な俺は鼻血ブー太郎である。


「いやいやいやいや! 傷口ちゅっちゅしなきゃならんとか……!」


 出来るわけない!


 そんなの無理だよ! 無理無理!!


 僕はじゅかちぃ!!


 それに、そういう事は好きな人同士が……っ!


「うし、とりあえずおっぱいとお腹からやるか――」


 ん? 違うよ? 別にミルクのお腹とかパイオツにキスしたいとかじゃないよ? ほら! 早くしないとミルクが死んじゃうっ!


 俺は無理やり正当化させた変態行動をする為、飛ぶようにミルクの横に正座する。


「いやでも冗談抜きでどうにか回復してくれ……!」


 爛れていても白く美しいお腹に顔を近づけ、どうせならもう胸揉んじゃおっかな……。


 と、心配に垣間見える変態が暴走仕掛けた時だった――


 薄らと目を開けたミルクは、苦しそうに咳き込んだ後、緩慢な動作で俺の手を握った――


「ん……リク……くん?」

「ひやっふぉぉぉぉぉぉぉぉ!? どどどどどうしたミルク! だだだ大丈夫か!?」

「大丈夫……だよ…………」


 地獄である――


 こんなに苦しんでる子の前で変態モード覚醒させてたとか普通に死にたくなる。

 そんな変態な俺に対してもミルクは心配をかけさせないよう、苦渋の表情を浮かべながらもぎこちなく頬を動かし、不器用な笑顔を見せる。


「ごめんねリクくん……私もうダメみたい……」

「――!!」


 そんな弱々しいミルクの声に俺は何言ってるんだ! とつい怒りたくなった。しかしそれは喉まで湧き上がった後、下り坂に従うように自然と心に戻って行ってしまった……。


 爛れる下腹部、爛れる左腕、傷だらけの体、風穴の空いた左肩……。


 今思えばそんな肩で弓を握っていたのかと、俺は目を背けたくなった――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 

 

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