ゲミューゼ国へ


 ローゼとゲヴィッターが机の上に置いたトウモロコシを見て、「トウモロコシがあったのか」と驚くリマン。バサバサという羽音がし、コクチョウのサンクトが5人の孤児を連れてリマンの前に着地した。

 「リマン。この子たちを保護してくれ」「わかった。2階が空いている」孤児たちは2階でシャワーを浴びて着替え、寝息を立て始めた。

 

 「アプフェル!」妹の姿に驚いて駆け寄ると、足に切り傷ができていた。雪解け水を飲み、イチゴやブルーベリーを食べフェスト村まで避難してきたらしい。レイクがアプフェルの足に包帯を巻き、湯気の立つコーンスープを渡す。


 「ありがとう」ローゼに髪をなでられ、「髪、洗ってくれてありがとう。ローゼさん」レイクは照れくさそうに小声で答え、女児3人と編み物を始めた。


 サンクト、アプフェルらとゲミューゼ国へ向かったローゼは二人の娘を連れた妊婦が倒れているのに気づき駆け寄った。

 トマトスープを木のおわんに入れて渡すと、「私たちの好物です」と泣きながら飲み終え「ありがとうございました」と手を振った。



 枯れて黒ずんだハクサイやキャベツを見て、アプフェルが「しなびちゃってる」と小声で言う。タマネギ売りの女性が「スープにしてもおいしいタマネギです」と一つをローゼに渡してきた。

 「甘い!」驚くローゼ。女性は嬉しそうに「私が父と作っています」と説明する。


 3個購入しニンジンが描かれたゲミューゼ国の硬貨を渡すと、「ありがとうございます」と言い殺菌済みで湯気の立つ牛乳を出してくれた。


 「トゥルぺ様やクオゥ様らは子牛のステーキやピッツアなどを毎日食べ、トマトや

タマネギ、牛乳も足りなくなっています」怒りをあらわにする女性。


 「リスやインコたちに、食べ終えた果物や野菜の種を運んでもらいませんか?」ローゼが言うと女性は満面の笑みを浮かべ、動物たちを呼びに行った。

 「アプリコット、種を運んで」アプリコットは食べ終えたブルーベリーとラズベリーの種をくちばしで地面に落とし、リスたちも土の中に栗を埋めていく。ゲヴィッターとゲミューゼ国の村人たちが「こんな方法があったのか」と驚いていた。



 フェスト村でレイクたちに読み聞かせをしていた時、タマネギ売りの女性の父親と二人の娘を連れた妊婦が訪ねて来た。ブルーメ国の市民に、手縫いのコートやブーツを届けると言う。

 ミシンと羊から刈った毛を使い、20着のコートを縫い終えた妊婦に「ありがとうございます!」と頭を下げるローゼとアプフェル。

 「ローゼ様は、私と娘たちを救ってくださいました。感謝の気持ちです」と答え、

妊婦はコートをバッファローの背中に乗せブルーメ国へと向かった。


 無事届けられたコートとブーツを見た市民たちは歓喜し、子どもたちにも着せた。


 


 


 



 




 


 

 





 

 

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