ローゼとフェスト村

porksoup (ポークスープ)

ローゼ・ブルーメとフェスト村



 戦火による食料不足で餓死者が相次ぐブルーメ国。背中まである茶髪と新緑色の目にベージュのベストとブーツ姿の剣士ローゼは髪についた雪を払い落とし、フェスト村へ入る。75歳で村長のゾウガメ・リマンが駆け寄り「ローゼ!」と笑みを見せた。

 一礼すると、リマンの妻・ジボの背中から灰色の髪に茶色の目を持つ男性が下りてきた。


 「ゲヴィッター、ローゼ様だ」リマンがにっこりと笑い、男性に言う。「ローゼ・ブルーメ。16歳です」「ゲヴィッター・リートだ。ゲミューゼ国の北にあるフェスト村ではバッファローが移動に不可欠で、野菜やチーズ、朗読用の本を積んだりもする。

 ゲミューゼ国では日照時間が短くなってとれる野菜が減り、妊婦や赤ちゃんも餓死しているんだ」


 3~18歳までの孤児20人がローゼたちに駆け寄って来て、「コーンスープの鍋は?」と聞く。ゲヴィッターが鍋を持って来て湯気の立つコーンスープを木の皿に入れスプーンを渡すと、一心不乱に飲み始めた。「のどに詰まらせんようにね」ジボが言うと「うん‼」と元気な声が響いた。


 雪解け水をろ過し終えたローゼは使い古した革のカバンから出した古着と針で、20人分の靴下やベストを縫う。「あの子たちは戦火から避難し、市場で購入した古本を読んで字を覚えながら過ごしているが、学校も焼けて破壊されている。野菜やチーズもないので、栄養が取れずに餓死してしまう」リマンが小声で言う。

 ジボが「パンや手を洗う水もないのよ」と怒りを見せる。「ローゼ。ゲヴィッターと市場に行って、野菜と本を買ってきてくれ」リマンが二人に頭を下げた。



 バッファローに乗って市場に向かうと、すすが付着した靴を一心不乱に磨いている11歳の男子に出会った。着古した黒いベストと革靴には穴が開き、手には血まめができている。吊るした豚肉を売る70代の男性から靴磨き代としてヴァッサー国の水色の硬貨を2枚渡され、革の財布にしまった。

 「俺、レイク」「ローゼよ」レイクはローゼに雪解け水で濡らしたタオルで髪を拭かれ、照れくさそうな顔を見せる。ローゼは木の棚に置かれていた6冊の古本を手に取り、店主の女性にブルーメ国の硬貨を4枚渡した。

 

 「俺はゲヴィッター。フェスト村に来るか?」「うん」バッファローは3人と太く黄色いトウモロコシ2本を背中に乗せ、フェスト村に戻った。


 「おかえりローゼお姉ちゃん。ありがとう」靴下とベストを着用した20人が歓喜の声を上げ、ローゼに駆け寄って来た。「着心地はどうかな?」「丈夫であたたかいよ」と7歳の女児が嬉しそうに答え、踊り始める。

 「レイク。3人部屋でも平気?」ジボが小声で聞く。「はい。慣れているので」レイクは9歳と12歳の男児と色付きのコマを回して遊んだ。 


 




 


 

 

 



 



 







 

 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る