第6話 二月の記憶

「二月の記憶」


二月のことはよく憶えていない

何をしていたのかもわからない

ただ古い窓から

曇り空をながめていた

春が来るのをじっと待っていた


二月のことはよく思い出せない

何を思っていたのかもわからない

ただ暗い部屋で

風の音を聞いていた

冬が去るのを黙って願っていた


あの街に行きたかった

あの頃に戻りたかった

ただすべてを失って

未来に絶望していた

年老いた母のことが悲しかった


二月のことは忘れていない

ただ君だけが

そばにいてくれたことを

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