決勝戦 5

 実況

・第3マッチ終了です! 復活した日本最強の浮沈艦が、華麗なる立ち回りを見せ、ODDS&ENDSの勝利です! なんという無駄のない完璧なオーダーでしょうか! いかがだったでしょうか? 大柳さん


 解説

・1マッチ目とは雲泥の差でしたね。急を有する短い時間で、オーダーだけでなくその理由まで伝えるとは。あれがあると、動く側も迷いなく動けるんですよね


 実況

・そのおかげか、チームメンバーの選手も指示からのディレイ無しで動けていましたもんね。戦況が常に変わるフォージにとってこれほど、これほど力強い武器はありませんからね


 解説

・オーダーって言うのは、実際にプレイしながらするのって、かなり難しんですよ。戦っている最中に行動を予測して、それを頭のなかで構築し、言語化するという動作をいっぺんにしなければいけないので。


 実況

・しかも、自分のなかで迷いがあってもいけませんからね




「「「「ナイス!」」」」


 全員が立ち上がり勝利を称え合う。


「ごめん、やられちゃって」


 申し訳なさそうに、手を合わせながらニシが頭を下げる。


「いやいや、あれは俺がヒールしないでって言ったからで、仕方がないことだよ」


 むしろ、自分が落ちることを恐れずに、オーダー通り動いてくれたことに、感謝したいくらいだ。さっきまでダメダメだった俺を、それでも信じてくれていた証拠だ。

 フォージ以外のゲームでも、仲間をカバーするか自分のヒールを優先するかは、永遠の課題である。もちろん場面によるというのも、あるのだが誰の意見を優先するかに、大きく比重が置かれる。

 もし、俺がニシへの信頼が無ければ、あの場面はヒールを優先していただろう。恋ったゲームはが一番の悪だと思われがちだから。


「そうそう、ニシのあれがなかったら敵の位置分からなかったしな!」


 テツが、なに落ち込んでんだと言わんばかりに、ニシの背中を叩いた。だからといって、特に何かを言う気配はない。なんだかんだ言ってこの二人の相性はいいのだろう。


「残り1勝だよ!」


 目の前の大きな大きな、目標が本当に目の前まで来た。それをタイガが再確認する。


「先にリーチだな」


「だからって油断するなよ」


「俺がそんなことするわけないだろ?」


「一番調子乗りそうだが」


 口角が上がっているテツに対して、気を引き締めろとニシが言う。ふと、ニシの手を見ると、今でも震えているのが分かった。テツに言うのと同時に、自分にも言い聞かせているのだろう。

 それほどまでに、この大舞台での戦いと、目標へあと一歩という場面は、今まで以上にプレッシャーを与える場面だ。


「今回もかなりうまくいったけど、向こうもさすがに、なにかアクションを見せてきますかね?」


 そんな中でも俺の尻ぬぐいをして、なおかつ実力を証明するかのような活躍をしている、タイガがいかに常人離れしているかが分かる。

 しかも冷静だ。


「そうだな。構成は変わらないとは思うけど」


 このままあっさり取らせてくれるほど生易しくはないだろうな。


「さっきまではずいぶんと自分たちの腕を過信している感じはありましたからね。もう少し、慎重に起草ではありますが」


 それは、俺も感じていた。こちらを舐めているというよりは、自分達の力を信じて疑わない、そういった気持ちが伝わってきた。


「いや、逆に大胆に来るかもしれん。前のニシのヘッドショットスナイパーみたいに」


「それもありそうだな」


 ここまで来ると、もう後が無いから何をしてきても不思議ではない。切羽詰まった人間が、どれほどの力を発揮できるかは、俺が一番よく分かっている。


「今のところ、なんだかんだ、囲い込まれて無いからな。それが一番の要因だと思う」


 今のところは、端攻めが成功しているが、向こうがその対策を取ってくれば、簡単に囲まれて、少しづつ射貫かれて終わる。もし、次のマッチ相手がその作戦できたときようの対策もある。しかし、それだと一つ問題点があるのだが。

 だんだんと自分の頭の中がいっぱいになってくるのが分かる。しかし、時間は無限にあるわけではない。




 実況

・さぁ、いよいよ優勝に大手をかけたチームODDS&ENDS! このまま勝負を決め切るのか。はたまた、チームSTRADAがそれを食い止め、第5試合にもつれ込むのか。目が離せない状況になってきました


 解説

・決勝ということもあって、KARUMA選手とショーター選手のヘッドショット率が低いんですよね。おそらく、AIMも温まってきた所でしょうから、ここから期待ですよ


 実況

・ヘッドショットで次々と抜いていくのが、スナイパーの醍醐味ですからね。恐らく、彼らを見てスナイパーを練習し始めた人もいるんじゃないでしょうか? 


 解説

・絶対にいますよ。そう考えると、両チームも、フォージの常識というか固定概念のようなものを、打ち破ってここまで上がってきましたよね


 実況

・確かに言われてみればそうですね。スナイパーと盾。どっちもフォージの中だと不遇な扱いをふける側ですもんね


 解説

・環境とスタイルに合っていないと、いうのもそうですが、なにより、使い方が難しいですからね。


 実況

・改革の両チームというわけですか


 解説

・そうですね。恐らく、両チームとも普通にフォージが上手いチームが上がってきてくれた方が、楽に勝てたと思います。見ている方は楽しいですが


 実況

・本当にそうですね。そんな楽しい時間も果たして終わってしまうのでしょうか?準備が整ったようですので、第4マッチの開始となります




 もう、試合は始まってしまう。いくら考えても、相手の出方次第で全てが変ってしまう。俺に出来ることは、中途半端な指示を出さないことだけ。自分がこれだと思った決断を、自信満々な声で伝えるだけだ。


「よし! 行くぞ!」


「はい!」「おお!」「ええ!」


 第4マッチがスタートした。

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