決勝戦 4

「戦闘は俺が走る! タイガは付いてきてくれ! テツは右、ニシは左から上がってくれ」


「「「了解!」」」


 ここまで2マッチは、相手は一人が直線で一人が斜めから、射線を通していた。そのため、さっきはその穴を突いてて後衛までたどり着いた。

 相手からしたら、かなりの誤算だっただろう。だから次は、両方斜めにクロスをして射線を通して来るだろう。それの方が穴がな索敵出来るから。

 しかし、それはこっちのチャンスでもある。

 それは、カバー範囲は広いがどちらか一方の対応だけすればいい。これは、なにかあったときのサポート力が、薄いというわけだ。


「テツとニシはいったん境界ラインの少し手前で止まって」


「「了解」」


「俺とタイガが、ノンストップで進む。そしたら何かしらのアクションをしてくるだろうから、スナイパーの音がしたら、走って」


「分かりました!」「おお!」


 俺とタイガは止まることなく、そのまま境界ラインを超えた。ここからは敵がいつ出てくるか分からない。背中さえ取られなければ、すぐにダウンをすることは無いだろう。


「タイガ、見つけたらすぐに撃っていいぞ」


「はい!」


 絶対にアタッカーの二人を中央に配置しているはずだ。そうすれば、もう、目の前に現れてもおかしくない。ただ、さっきの試合であっさり倒されてしまったから、警戒して顔を出しては来ないか?

 スナイパー2人という、明らかに重い編成をしているから、何よりも重要になるのが、アタッカー2人の存在だ。人数有利を作れず、追い込むこともできていない状態で、二人がダウンすれば、ほぼほぼ勝ち目はないからだ。


「タイガ、出来る限り俺にピッタリついて!」


「はい!」


 一発でヘッドショットを抜かれない限りは、タイガなら絶対に勝てる。だけど、2本のスナイパーを同時に胴体に当てられたら、ダウンしてしまうため、タイガの緊張感はとてつもないだろう。

 さっきは、そんな状態でありながら、オーダーまで出して最前線を走っていたんだから。肝が据わっている。


「まだアクションなさそうですか?」


 その場でしゃがみ込み、様子をうかがっているテツが、不安そうに聞く。二人からしてもそうだ。いつ飛んでくるかも分からない一撃必殺の武器がどこにいるか分からない、状況下にいるのだから。


「まだだね。もう、粘り勝負になってる」


「でも、向こうからは絶対に僕たちの位置は捕捉されてると思うんですけどね」


「ここまで来てれば、さすがにな」


 さて、どうしたものか。俺とタイガはいったん足を止める。このまま進み過ぎると、囲い込まれることになる。一応エリア的には、アドバンテージを取れているので、このままポイントを取るのでもいいのだが、それは向こうにも行動の時間を与えることになる。


「テツ、ニシ! ちょっとずつでいいから、俺達の方に寄ってきて! スナに細心の注意を払いながら!」


「「了解」」


 向こうが先に手を出してこないなら、こちらが先手を取ろう。二人がすぐに合流できる位置に来たら、一気にどちらかのサイドに寄って、勝負を決める。

 さっきと違い、今回は距離が近いためすぐに対面するだろう。俺が3人分の盾として、役割を発揮できれば、問題なく勝てる。

 そんなことを考えていると、既に二人はすぐそこまで来ている。問題はどちらに寄るかなのだが。相手チームの敵の位置をまだ誰一人として把握できていない。そのため、もしかしたら、どちらか一方に敵の数が寄っている可能性がある。

 そうなれば、手薄な方に詰めたいのだが。


「ヴィクターさん! 今チラッと見えました! 二人のちょうど真左ぐらいに一人います!」


 左サイドから上がってきた、ニシが運よく敵を発見してくれた。

 これが囮なのか、それとも純粋に位置バレをしたのかは、分からないが、今ならニシと挟みこめる位置だ。


「テツ! 姿見られていいから、全力で俺の後を追ってきて! ニシ! そいつを挟み込むよ。撃てそうだったら撃っていいよ。タイガ行くよ!」


「はい!」「了解」「おお!」


 俺とタイガは90度曲がり、一気にニシから報告を受けた敵目がけて進む。相手が、ビビッて、後退してくれれば一番危なげなく倒すことが出来る。俺の盾に隠れてタイガが撃てるからだ。もし、その場に残ったとしたら、ニシが後ろからフリーキルできるだろう。

 問題は、残りの仲間次第だが。


「スナ飛んできた! 俺側の方!」


「やりきって!」


 ニシの方にスナイパーの弾が飛んできたが、胴体で済んだようだ。まだHPはある。ここで弱気になると、一気に相手の思い通りに、戦況が動くので確実に1枚落としたいところだ。


「ダウンさせた!」


 HPがローになったニシを狙って、挟んでいた敵が顔を出したため、タイガがフリーキルを取ることが出来た。そして、スナイパーの位置もだいたい把握できたため、一気に勝負の決めどころだ。


「ニシ! そのまま俺達と合流して前出るよ! テツ、そこでいったん止まって、詰めてきたとき以外は顔出さなくていい!」


「了解」


 ニシは俺の声を聞いてすぐさま、合流する。そのまま俺を先頭にタイガ、ニシと続いて、孤立しているスナイパーのキルを取りに行く。

 すると、思った以上にそばにいた、スナイパーはもう俺達の目の前にいた。こちらに銃口を向けているのが分かるが、俺の盾ならそれを容易に防げる。


「え!? ごめんやられた!」


 俺の盾に銃弾が当たったと同時に、ニシがダウンする。一瞬何があったのか理解できなかったのだが。


「ヴィクターさん! 俺の前方にスナイパー確認! 一緒にアタッカーもいる!」


 テツの報告で、状況理解が追い付いた。どうやら対角線上にいたもう一人に、射貫かれたようだ。


「大丈夫! タイガいくよ!」


 目の前のスナイパーはまだリロード中だ。


「倒した!」


 これで、3対2だ。


「テツ、すぐそっち寄るから、相手が顔出したら撃っていいよ。無理しない程度に」


「任せろ!」


 再び俺とタイガは一列になり、残りの二人の方に向かっていく。恐らく相手は孤立しているテツを狙ってくるだろう。そこで不用意に前に出たアタッカーとをテツとタイガでやりきれれば、残りはスナイパーだけ。

 全然間に合う距離ではある。


「ヴィクターさん! アタッカーそっち向かってる」


 そう思っていた矢先、テツから敵がこっちに来ている報告を受ける。これは嬉しい誤算だ。恐らく相手はテツの居場所を、把握しきれていないようだ。そのため、こちらに全員いると思って、突っ込んできたのだろう。


「相手が撃ち始めるまで待って!」


「了解!」


 残りのスナイパーがどっちだかは、分からないが余程自分の腕に自信があるようだ。残りの3人も撃ちぬけると信じているのだろう。不利な状況でも、自信を持てるのは、いいことだが。それが誤算だ。


「見えた!」


 相手の姿を確認できる位置まで来た。本当に向こうのアタッカーは囮として、使われているのがよく分かる。そんな無防備に体をだしていたら、瞬殺されてもおかしくないだろうに。

 しかし、これは既にスナイパーの射程範囲に入ったことも意味する。


「撃て!」


 相手の弾が俺の盾に当たり始めたと同時に俺は叫ぶ。


「やった!」


 すると、すぐに相手はダウン。それと同時に、俺の横をスナイパーの弾が通る。どうやら、後ろにいるタイガが顔を出すと思ってAIMを置いていたようだ。しかし、その作戦は失敗に終わる。


「ラスト! 前出て!」


 テツが走り出し、タイガも俺の脇から抜けて、一気に残りのスナイパーの方に駆けていく。真っすぐ進むから格好の的ではあるが、どっちかがやられても、リロードの内にキルを取れる位置にいる。


 VICTORY


 もともと位置がバレていたタイガの胴体に弾が当たりHPがミリにまでなったが、そのまま突っ込んだタイガがキルを取り、3マッチ目が終了した。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る