やっぱりゲームって最高だ 2

「いやいやいや! ヴィクターさん強すぎでしょ!!!」


「まるで、ずっと一緒に、やってきたかのような安定感」


「ほら言ったでしょ!? ヴィクターさんは最強なんだって!」


 テツ君、ニシ君、タイガ君がそれぞれ思い思いの感想を口にする。


 今の所、4戦4勝。始めてからちょうど2時間が経過したところだ。

 事実俺もボロ勝ちしていて驚いている。

 フォージのランクマッチは、2本先取でマッチ勝利となる。1試合がパーティーメンバー同時にリスポーン待ちになるまで続くので、泥試合が続くと、1試合の時間も長くなる。

 しかし、俺たちは、ほぼストレート勝ちで来た。


 フォージは世界同時リリースされたため、ランクマッチも世界ランクとほぼ同義になる。その、決して低いレベルではないはずの場所で、連勝したことが嬉しくてたまらない。

 それに、やはりパーティーゲーを、フルパでやるのは楽しい。自分の意思、状況報告に返事がかってきて、それに応えてもらえること、味方の意思に応えられることが、何よりも嬉しい。


 これだよ。これ。この達成感と勝利の余韻が楽しくて、嬉しくて、気持ちよかったんだ。


 そして、なによりも、ゲームを辞めてから一度も感じたことのない、自己肯定感。

 だんだんと、あの時のことを思い出してきた。

 俺は努力して、強い俺がなによりも好きだったんだ。負ければ悔しい。その悔しさを糧により強くなる。強くなるための、その過程がなによりも楽しかった。


 だからこそ、反動が大きかったのだが。


「やっぱり楽しいねゲームは!」


 俺は余韻の末、ようやく口を開くことができた。


「ヴィクターさん‥‥‥。本当にありがとうございます。本当に‥‥‥一緒にゲーム出来てよかったです」


 突然タイガ君が、泣き出してしまった。悲しくて泣いている訳ではないのはすぐに分かる。だけど、そんなに感謝されるほど、のことはしていないはずだ。

「一緒にゲームをしよ」と言われたから、やっただけで、そこに嫌嫌とかの思いは一切ない。


「こいつ、ずっとヴィクターさんに憧れたらしいですよ。なんか恩があるとか、なんとか」


「ちょっと俺飲み物取ってきます」


 タイガ君はそう言って、離席していった。

 ずっとマッチ終了して、すぐに次。とやってきたので、つかの間の休息だ。一人でやっているよりも、夢中でやっていたため、喉の渇きすら忘れていた。

 デスクの横に置いてある、露結しきったコーヒーをやっと口にした。


「ヴィクターさん。今日は本当に、ありがとうございました。急に自分の過去を知ってる人からの連絡は、さぞ驚いたと思います。」


 ニシ君から、改めてと感謝された。またもや、変な気分になる。

 もともと、落ち着いた喋り方をする人だが、ゲーム中は流石に声を、はる場面があった。しかし、今はそれともまた少し違う、神妙な声だった。


「いや、普通にこえーよな。俺たちもちゃんと順序を追ったほうがいいって言ったのに、あいつ我慢出来ず先走りやがって」


 あ、一応俺と彼らを引き合わせる前に、話してはいたのか。

 そういえば、初めの方にも、テツ君がそんなこと言ってたっけ?


「二人は彼と結構長いんですか?」


 フォージから知り合った仲なら、4人のはずだ。だけど、3人ってことはそれ以前からというのは予想できるが、どうなのだろうか?

 会話を聞いている限り、慣れ親しんでいるようにも見えるが。


「いえ、そんなでもないですよ。」


「そうっすね。半年くらいっすかね? 後タメでいいですよ。俺たち3人もこんな感じなんで」


 意外と最近だったことに驚いた。それじゃあ、学校の同級生とかではないんだろうな。


「あ、じゃあ遠慮無く。思ったよりと短いんだね。なんか、感じとして、もうちょっと長いのかと」


「まあ? 俺たちからしたら可愛い弟みたいな感じだし? だけど、俺たちを引っ張っているのは間違いなくタイガですけどね」


 タイガ君は結構若いと思ってたけど、やっぱりそうか。


「俺たち二人とも、タイガに救って貰ったのみたいなところあるんですよ。だから、そのタイガを救ったヴィクターさんは、さらに恩人なんです」


「だから、さっきからそんなに改まった感じなのか。もうちょっとフランクに来てもらった方が、こっちも気まずくないんだけど‥」


 そう言うと、すかさずテツ君が。


「あ、マジ?」


「おい! お前いきなり変わりすぎだろ!」


 やはりこの二人も随分と仲が良さそうだ。まるで漫才を見ているようだ。



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