2020年1月28日(火)-1

「今日は雨だねぇ」


 雪にならなくてよかった。天気予報では雨と雪の両方のマークがついていて、いやどっちだよ、はっきりしろよ、二股かけるなよと空に向かって中指立てたい気持ちでいっぱいだったけれど。雨ならまぁ許してやろうという感じだ。


(この辺は関東平野のちょうど端っこで、雪雲は山がさえぎってくれるから、基本的に雪が降らないところなのよね)


 とはいえ寒さは普通にある。日の光もない真冬の雨ほど手がかじかむものもない。


 そんな寒さを抱えつつ洗濯物を片付けたわたしは10時に歯医者へ。

 下の子が幼稚園に通い始めたことで、午前中に気兼ねなく一人で医者にかかれるようになったのは本当にありがたいことだ。仕事もフリーランスだから自分で調整できるのもありがたい。


(今年もいっぱいお仕事が舞い込みますように……)


 そんなことを思いつつ、子供たちも世話になっている歯医者に向かい、待合室でどエロいTL小説をほくほくしながら読んで待つ。

 そして治療ではほくほくしたエロい気持ちがぶっ飛ぶようなキュイイイイイン音に見舞われて、よろよろになってお会計することになった。


(いやぁ……普通に削られるの痛いわ響くわ怖いわ~。そりゃ四歳の息子が「ぎゃああああ」ってなるのも納得だわ~)


 よろよろしながら帰って、その後は歯を削られたダメージを癒やすがごとく、どエロい小説の続きを読んでによによしていたら一人時間が終わった。いや仕事しろよ自分。


「おっと、アラームが鳴った。昨日から園バスのダイヤが変わったんだよな」


 年に何回か幼稚園バスのダイヤが変わるのだが、一学期は朝は8時・帰りは14時、二学期は朝は9時近く・帰りは15時近くと、一時間も変わってしまう。

 そして三学期は一月のみ早い時間で、一月の最後の週あたりから遅いダイヤに変わるのだ。

 今週から変わったため、園バスが帰ってくる時間にセットしてあるアラームの時間も変わっていた。14時40分に家を出て、のんびりバスが止まるところへ向かう。


 ほどなくバスがすべり込んできて、笑顔の先生に介助されて娘と息子が降りてきた。


「ママ~、今日○市君が泣いちゃったんだよ」


 園バスが去って行くのを見送るなり、娘がすぐに口を開いた。


「あらま、なにかあったのかい?」

「遅い時間のバスに乗らないと行けないのに、早い時間のバスに乗ろうとして並んで待ってたの。そしたら先生に『○市君は次のバスだよ』て言われて、泣いちゃってた」

「あらま。○君、泣いちゃったの?」


 ほほ笑ましい~と思いながら息子のほうを向くと、帽子の影で口をへの字に曲げながら「うん」と息子はうなずいた。


「なんで乗れないのお~って思って、泣いちゃったの」

「そっかぁ」

「でも次のバスがきたときに先生に『次は○市君の番だよ』って言われたらすぐ乗ってたよ」


 すぐさま弟をフォローする娘。偉いな。そしてバスに乗れないいいいと泣く息子も大概可愛いな。


 息子は普通のしゃべりも主語が抜けたり助詞が間違っているため、話が通らないことも多い。自分からは幼稚園の話もまずしないだけに、娘がこうして報告してくれるのはありがたいことなのだ。

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