2020年1月10日(金)-2

 まだ心なし耳がジンジンするような……という気持ちを引きずりつつ、園バスで帰ってきた娘と息子を迎えに。

 帰りのバスではだいたい一つの座席に二人ずつ園児が座っているけど、うちの子たちは必ず二人一緒の座席で帰ってくるので、毎度ちょっとほっこりする。


「はい、お帰り~」


 バスの階段をたんたんっと降りてきた子供たちを出迎える。先生に挨拶してばいば~いと手を振りバスを見送ると、年長の娘がさっそく声をかけてきた。


「今日も○市君のクラスに、バスに乗るよって迎えに行ったよ」


 長女として生まれたからか、二学年下の弟の面倒を娘は本当によく見てくれる。

 息子が年少さんとして入園してからというもの、年長さんの娘は、弟が朝ちゃんと着替えなどの支度ができているか、帰りは園バスにちゃんと間に合うだろうかと、常にアンテナを張って弟の様子を見守っているらしい。


(ありがたいことだけど、もっと自分ファーストにわがままになってもいいのにな)


 と、母親として世話好きすぎる娘を心配する一方、わたしも彼女と同じ『弟を持つ長女』という立ち位置で育っただけに、お世話したい欲が満たされることで、自尊心が満たされるからくりもなんとなくわかる。

 だからいつも「そうなんだ。ありがとうね」と娘ににっこり笑っておくのだ。


(君は好きで長女に産まれたわけじゃないんだから、弟のことなんてたまには放っておいてもいいんだからね)と思いながら。



 さて、そんなしみじみした感傷を抱いている暇は実はあんまりない。なんと言っても2時半から歯医者の予約が入っている。

 すぐに家に入り、遊び着やらランチクロスやらを洗濯機に放り込んだら、歯ブラシ片手に子供たちの歯を慎重にブラッシング。保険証はどこだ診察券はどこだとやっていたら、あっという間に予約の時間だ。

 午後一番の診療時間に予約を入れたので待ち時間は少なかったものの……息子に六本も虫歯があることが判明してとりあえずぶくぶくと泡を吹きそうになる。


「ブラッシングは悪くないんですけどね~。よく磨けているのになんでこんなに虫歯あるんだろう」


 と不思議がっている院長先生、それはわたしが歯医者の予約があるからとさっきたまたまがんばっただけの話で、実は夜の仕上げ磨き、日々の忙しさにかまけて忘れがちなんですよ……


 なんて真実はもちろん言わずに「治療お願いしまーす」としれっと伝える。母親業を平常メンタルでこなすには、そういうちょっとしたずるさも必要なのである。

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